COLUMN ビジネスシンカー

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2020.12

ビズシンカーインタビュー 日本の伝統を「伝える」
それは自分らしく生きる選択肢を増やすこと。

始めから職人さんに商品づくりをお願いせず、
1年~3年、考え方や感覚をじっくりすり合わせる

BIZ ● でも職人さんにこういうものを作ってください、やりませんかと言っても受け入れてもらうまでは、結構苦労されたと思いますが。

中川● 和えるでは、出逢った職人さんと、まずお互いの想いを共有しあってから、商品の製作に進みます。工房に伺うことはもちろん、一緒に地域を巡ったり、食を共にしたりしながら、時間をかけてお互いのことを知る。その後に「じゃあ」という感じで、自然にものづくりに進んで行くことが多いです。「いくらでこれ作ってください」など、いきなりビジネスのお話から入ることはしません。自分も相手も社会も、関わる人すべてが幸せであるよう「三方以上良し」を常に大切にしています。商品開発も1 年から3 年ぐらいかけて行うので、職人さんと、その都度丁寧に話し合いをして進めます。

aeruの『こぼしにくいコップ・器』シリーズは、同じデザインのものを異なる産地で作っていただいています。ですので、難しい製作ポイントについては他の産地の職人さん同士をつなぎ、「ここは、どうやって作っている」など話していただくことも。皆さんが、私達のファミリーという感じで、全国に親戚がいるような感覚で職人さんとお付き合いをしています。

BIZ ● とういうと、通い続けても商品などの具体的な話にならないという場合もあるわけですか?

中川● そうですね。"0 歳からの伝統ブランドaeru"という事業ではご一緒しなくても、その他の事業でご一緒するということも多くあります。

例えば、"aeru room" という事業。全国の宿泊施設に泊まってその地域の歴史や伝統を体感いただける "aeru room"を生み出す事業があるのですが、そこで漆職人さんに天井を漆で塗っていただいたり、竹の職人さんに竹を設えていただいたりと、1つの事業でご一緒できなくても、ほかの事業でご一緒させていただくこともあります。

和えるで大切にしていることは「伝える」ということです。矢島の言葉で言うと、和える自体がジャーナリズムなのだと。

そのため、様々な事業で、暮し手の方々が、伝統や職人さんの手仕事と出逢う入り口を生み出しています。

だからお店に来て商品に触れてもらうだけでいい。買わなくてもいいんです。商品が売れるのは目的ではなく、「あそこでこの焼き物の話をしてた」とか、「職人さんって、こういうことをされているんだ」ということを知ってもらう。

この間、日経新聞さんに、他と協調してじっくり成長する「ゼブラ型企業」というくくりで「和える」を代表企業としてご紹介いただき、私たちの姿勢が社会にも通じていたことを感じ、とても嬉しかったです。いま10の事業を展開していますが、全ての事業に共通しているのは、「伝統を伝える」ということです。

和えるの事業拠点である東京「aeru meguro」、京都「aeru gojo」には、「0 歳からの伝統ブランドaeru」の商品以外に漆の木などの原材料も展示しています。最終製品だけではなく、自然の恵みをいただいて原材料が生まれ、原材料を作る職人さんもいることなど、ものが生まれる背景まで思考を巡らせていただきたいと思っています。

漆器のお椀は知っているけど「漆って何?」とか、「漆って木から採れるの?」といった疑問が湧くような方がいれば、採取のために傷がつけられた漆の木をお見せして、「この傷を木が頑張って治そうとして出す液体の正体が、漆なのですよ」と話しています。

他にも青森県の『津軽塗り』については、産地の弘前は雪国で、冬は何ヵ月も農作業ができなくなる。その間に、約50もの工程を3ヵ月弱かけて作られる、雪国に暮らす人々の気質が表れた技法であること。徳島県の『本藍染』については、吉野川は昔から暴れ川で氾濫しますが、その氾濫で土地に栄養が広がって、藍が豊かに育つなど、その地域の情景とか気候を目に浮かぶようにお伝えする。すると、「なるほどその地域で、生まれるべくして生まれた技術なんだ」とか、「それをずっと守っている職人さんがいるんだ、昔の知恵ってすごいな」と思ってくださったりするんですね。

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