COLUMN ビジネスシンカー

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2021.02

サスティナブルな社会と会社の基軸
ESG、SDGsに取り組む前に知っておきたい
みんなの幸福学

会社が儲かってなければ、
社員を幸せにすることはできないのか?

当然「順番が逆ではないか」という反論も出てくるだろう。「会社が儲かっていなければ、社員を幸せにすることもできない」からだ。

あるいは、イノベーションが起きたのは、幸福かどうかではなく、むしろ目の前の課題に真剣に取り組み続けたからという意見もあるだろう。ピンチで危機が迫ったからこそ「火事場の馬鹿力」的に生まれるケースだ。

確かにいまのコロナ禍のなかではそうかもしれない。顧客が離れ、新しい営業スタイルや業態転換を迫られて、イノベーションを起こした会社や飲食店の話はよく聞く。

しかしそういった例でも、過去にさまざまな"幸福因子""幸福資産"が会社に宿っていたからこそ、ピンチの時に一緒に頑張れる社員がいたり、家族が応援してくれ、結果につながった可能性がある。

こうした話によく出てくるのが画家やピアニストなどが偉大な作品を残した例だ。有名どころでは画家のゴッホがいる。

ゴッホは恋人から振られることを繰り返し、さらに父親を失い人間関係に悩み、うつ病となった。描いた絵は生前一枚しか売れず(諸説あり)、苦しみ抜いたゴッホは、わずか37歳の若さで自ら命を絶った。

ゴッホの作品は死後、名画として評価されたが、その名画を生んだ背景にはこうした塗炭の苦しみがあったからこそという意見もある。

だがドイツの精神科医、A・J・ウェ· ターマン・ホルスティンによれば、21歳までのゴッホは社交的で人付き合いが良く、情熱的に作品に取り組んでいたという。「ロンドン時代はグレーのシルクハットをかぶって優雅に街に出かけていた。ゴッホの研究をしたほとんどの精神科医は彼が社会に適応した社交的な人間だったことにあまり重きを置いていない」と。

もちろん苦しみから逃れるために爆発的な想像力を仕事で見せる人もいる。だがそれは稀だ。

前野教授も、「業績が悪くなった場合、社員幸福度の少ない企業であれば、優秀な社員から離職していくだろう」と話す。業績優先で結果を出すまで法定外の残業が状態化し、互いが協力せず、社員同士が足の引っ張り合いをするような典型的なブラック企業であったらなおさらだ。

逆に社員幸福度が高い企業であれば、社員は離職せず、会社のために給料が7割になってもみんなと一緒に頑張って乗り切ろうという社員が多くなるという。ある一時期厳しい状況になったとしても、そこから社員が一丸となって業績を盛り返し、絆も強くなってより幸福度の高い会社になっていく。つまり幸せを感じる社員が多い会社は長寿企業になっていく可能性が高いのだ。

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