COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2021.03

知らずに「奴隷労働の手先」になってはいないか 知っておくべき
”サプライチェーンのいま”<前編>

有名グローバル企業、続々
民間の格付け機関が奴隷労働防止対策を評価

現代奴隷については各国政府だけではなく、たとえばネスレ、ユニリーバなど世界に拠点を置く民間企業が独自に行動を起こしている。

日本企業ではANAグループが2018年に日本企業で初めて「人権報告書」を発表している。イオンも2018年、トヨタ自動車も2019年に人権対策に取り組む「ザ・グローバル・アライアンス・フォー。サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)に加盟、国内の外国人労働者の問題解決に向けた情報共有を始めている。

企業環境においてはESG(環境・社会・ガバナンス)投資が重視されつつある。ESG投資とは、環境・社会・ガバナンスの分野において、財務データ以外のネガティブな要素やポジティブな要素評価をベースにした投資のこと。人権やダイバーシティ、従業員対応などのスコア、環境破壊などの対応スコアなどからスクリーニングをかけ、投資対象を選んでいく投資法で、投資ファンドなどが採用するようになっている。

現代企業はこうした有力な投資会社の意見やスコアを無視できなくなりつつあり、たとえば英国の投資会社アビバ・インベスターズと北欧の大手銀行であるノルディア銀行、NGOともに設立した「企業人権ベンチマーク(CHRB)」という評価機関が、企業の人権の取り組みを評価し、格付けしている。

2017年にエントリーした企業は98社だったが、2019年には200社に増えた。スコアも100点満点中2017年時点では70点を超える企業は1社もなかったが、2019年には70点超の企業が6社に増えている。

日本ではキリンビールホールディングスやアサヒビール、ファーストリテイリング、イオン、キャノン、京セラ、キーエンス、HOYA、東京エレクトロンなどが、この評価機関にエントリーしている。

2019年トップだったのが83.3ポイントを獲得したアディダスであった。日本で最高ランクはファーストリテイリングの47.1。アマゾンやルイ・ビィトン・モエ・ヘネシーなど名だたる企業が10数ポイント台であることからするとかなりの健闘と言えるかもしれな
いが、残りの日本企業ではほとんどが1桁から10ポイント台である。

2020年は、セクターごとに企業評価の基準点が変わった。「自動車部門」と「それ以外」に分かれ、自動車ではフォードが50点満点中41.0でトップ。それ以外ではイタリアのエネルギー会社ENIが26点満点中25.0でトップとなった。

日本企業では、自動車部門ではホンダが14.2でトップ。それ以外では、ファーストリテイリングが19.5で日本勢トップだった。

  • LINE