COLUMN ビジネスシンカー

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2021.03

知らずに「奴隷労働の手先」になってはいないか 知っておくべき
”サプライチェーンのいま”<前編>

社員を大切にする文化を持つ企業は
なぜ奴隷労働対応で評価が低いのか

社員を大切にし、ドラスティックなコストダウンをせずに高度で繊細なサプライチェーンを築いてきた日本企業が、軒並み低いということは受け入れがたい面もあるだろう。そもそも欧州が軸となってつくった人権スコアは、日本企業の評価軸とズレがあって当然と考える向きもあるかもしれない。

だが現実的に日本企業は人権に対する意識が低い、と言わざるを得ない面がある。

日本政府は段階的に外国人労働者の受け入れの緩和を進めてきたが、不法労働や未就学児童などの問題が後を絶たない。外国人労働問題でしばしば取り上げられるのが、外国人技能実習生制度の問題だ。

厚生労働省の調査では2018年に外国人技能実習生を受け入れた7,334事業所のうち、実習生に対する労働法違反問題が発覚したのは5,160事業所にも上った。実に7割以上。しかも問題を起こしたのは人材不足に悩む中小ばかりではなく、日本を代表する大手企業でも実習とは違う単純労働をさせたことなどで、技能実習受け入れの認定取り消しを受けた例が複数ある。ここまで問題があると、そもそもの制度設計に問題があったとも思えてくるが、言えることは制度設計する側も受け入れる側も国際レベルからすれば、人権意識が不十分ということだ。

人権問題への取り組みは、労働人口が減少している日本の企業にとってはサプライチェーン上の問題ではなく、眼前の課題として突きつけられている。

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