COLUMN ビジネスシンカー

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2021.03

知らずに「奴隷労働の手先」になってはいないか 知っておくべき
”サプライチェーンのいま”<後編>

日本はバーチャルウォーターの
世界最大輸入国

サプライチェーンで問題となっているのは、奴隷労働や児童労働だけではない。かなり前から話題となっているのが、水問題である。日本では気候変動の影響で洪水や大雪が問題となっているが、海外に目を向けると飲料水や生活水、工業用水の確保が問題となっている。「水ストレス」という言葉がある。利用できる真水のなかからどれだけ取水できるかを示す言葉で、真水利用率が高いほど水ストレスが高い、となる。たとえば真水利用率が80%である地域は、100ある真水の80を常に使っているため、母数量が減った場合たちまち危機に晒されることになる。

ワシントンにある世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)の分析によれば、この値が80%以上となると一番高いExtremelyHigh Stress(極高ストレス状態)となり、常に水不足の危険と隣合わせ状況となる。極高ストレス状態にはサウジアラビアやモロッコ、イラン、カザフスタン、モンゴルなど砂漠地域が多い国が入っている。その次が40〜80%のHighStress(高ストレス状態)で、日本はここに位置する。意外に高いのだ。このゾーンにはインドやオーストラリア、韓国、リビア、メキシコ、スペイン、イタリア、トルコ、ペルーなどが入る。その下が20〜40%がMedium to High Stress(中から高ストレス)で、世界の穀倉地帯を持つ米国や中国が入っている。10〜20%がLow to Medium Stress(低から中ストレス)となり、ここにはロシア、カナダ、エジプトなどの
ほかフランス、ドイツ、ポーランド、フィンランドなどが入る。

人口が増え続けるアフリカやインドなどで、それに対応する食糧を確保しようとすれば、農作物を増収させる必要がある。単位あたりの収穫量に変化がないとすれば、灌漑などによって農地を広げるしかない。そのための水の獲得紛争が世界中で起こり始めているのだ。できた作物がその地域で消費されるだけならそのエリアの問題だが、サプライチェーンが伸びた現在では、国境をまたいで水が往来する。この水は、商品が作られる過程で使われた水の総量、いわゆる「バーチャルウォーター(仮想水)」として知られる。

たとえば1kgのトウモロコシの生産には1,800リットルの灌漑用水が必要となる。さらに家畜である牛はこうした穀物を飼料として消費して育つ。よって牛肉1kgにはトウモロコシ1kg分に使われた2,000倍の水が使われたことになる(環境省は、バーチャルウォーターの基準値を製品ごとに表示している)

水はこうした農産物、畜産物だけでなく、工業製品にも大量に使われている。日本は年間804億トンのバーチャルウォーターを輸入しているが、輸入量では世界最大だ。日本の年間降水量(2019)は1,668mmで、英国の1,220mm、フランスの867mm、米国の715mmに比べても遥かに高いので、いささか理解に苦しむだろう。理由は水消費の大きい牛肉や豚肉、大豆、小麦を大量に輸入していることがある。日本の水ストレス値が高いのは、輸入によるバーチャルウォーター量の影響が大きい。日本の輸入元は米国、カナダ、オーストラリアの3カ国に集中している。このうち米国とオーストラリアは今後水ストレスが上がっていく可能性があり、日本の食糧事情を大きく変える可能性もある。

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