COLUMN ビジネスシンカー

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2021.06

アフターコロナ時代を生き抜く技術発想
プリンタとエンジン技術の関係とは・・・
技術の応用力を磨け!
あの技術はこう生かされた!

軍事技術は民生技術の宝庫

前述した中島飛行機を例に取るまでもなく、世界的に歴史をたどると軍が開発した技術が民間で花開く例はかなり多くみられる。

たとえば今では当たり前に使っているコンピュータは、アメリカで開発されたENIACが最初とされているが、 これはミサイルの弾道計算のために開発された技術だ。また携帯電話もアメリカ陸軍の無線通信技術をベースにモトローラ社が開発したとされている。またGPSもアメリカが打ち上げた人工衛星からの信号を受け取り、位置を特定する偵察用技術だし、スマートフォンのCCDカメラもスパイ用に開発されたものだ。

さらに歴史を遡ると缶詰はナポレオン時代に開発された軍事用食で、またレトルト食品もアメリカがベトナム戦争時代に開発した食品技術だ。

ただ世界で初めて市販用のレトルト食品を生み出したのは日本の大塚食品である。レトルト食品は軍人用の携帯食であることから、その技術は機密事項で、大塚はその製法を得ることはできなかったのだ。だが当時大塚には医療用輸液(点滴)製造のノウハウがあり、これを応用できないかと考えた。大塚食品は試行錯誤の末、3分間だけお湯で温めるだけでできたてのカレーが食べられるレトルトカレー「ボンカレー」を開発する。これが現在のレトルト食品の濫觴(らんしょう)である。濫觴とは小さな流れが多くの支流を集めてやがて大河となる様を表現した中国の故事。大塚食品がレトルトパウチを開発した際、その技術特許は申請しなかった。このためその後多くの食品メーカーがレトルトパウチを使ったレトルト食品を続々投入。2020年のレトルト食品市場が単前年比3.6%増の2,736億円まで拡大している。ボンカレーが未開の地に刻んだ小さな流れは、多くのメーカーの参入によって現在の巨大なレトルト食品マーケットとなったのだ。まさに濫觴である。

ちなみに大塚は輸液の技術を使ってほかにも新市場を開拓している。スポーツドリンク市場だ。その嚆矢となったのが、いまや熱中症対策として定番アイテムとなった「ポカリスエット」。もともとは大塚の社員がメキシコに出張した際に、体調を崩し、入院した病院で、手術後を終えた医師が輸液をそのまま飲む姿を見て可能性を見出したのだった。以後、弱った体を回復させる‘‘飲める汗‘‘づくりに勤しみ、1980年に発売。以後熱中症対策の定番となっている。

軍事技術の応用に戻ると、電子レンジもその代表だ。もともとマイクロ波による殺人光線を研究していたアメリカのレイセオン社の研究者が、ポケットに入れていたチョコレートがマイクロ波によって溶けていたことに端を発する。社内で検討しているうちに、食品加熱に利用したほうが実用的であるという判断で民生化されたのである。日本では" 電子レンジ "と称させるが、アメリカではそのまま「マイクロウエーブ」と呼ぶのはそのためだ。

冬の定番となっているおしゃれなトレンチコートも実は軍事用として開発された。第一次大戦中のイギリスで軍が寒冷地用の軍用コートを求めたことが起こりで、イギリスのバーバリとアクアスキュータムがこれに応じ開発したのだ。

魚群探知機もそうだ。もともと潜水艦のソナーが民生化されたもので、漁業のイノベーションに大きく貢献している。

医療分野では遠隔手術システムが知られている。「ダ・ヴィンチ」はその代表で、負傷した兵士を遠隔で手術できるようにという目的で開発された。

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