COLUMN ビジネスシンカー

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2021.04

【new comer&考察】
もうこれさえあれば、食生活は十分?
広がる「完全食」市場

コロナ禍で外出機会も減り、運動不足で、食生活を見直そうと考えている人も多いのではないだろうか?

ビールメーカーは家呑み市場に向けた低アルコール飲料などのバリエーションを増やしたり、健康を意識する人たちに"トクホ"つきのノンアルコール飲料などを投入し、市場活性化に力を入れている。

自粛生活が続く中で改めて、健康について考えた人も多いだろう。こうしたなか、じわり注目を集めているのが「完全食」だ。

健康への高まりから機能性食品の市場は拡大しているが、これまではどちらかと言えば栄養のバランスを考えて、足りないものを補うという発想が中心だった。野菜や食物繊維が不足しているのであれば、野菜ジュースや青汁を飲み、タンパク質が足りなければプロテイン配合のカップ麺やエナジーバーを食べる、などだ。

健康に関する関心の高まりに伴い、ネットでは健康や栄養に関する情報が溢れかえっているが、では自分に何が足りなくて、どんな栄養をどんな食事から摂ればいいのか、専門家の指導を受けるトップアスリートでもないと把握は難しいだろう。そもそも忙しい現代人にはそんなことをいちいち考えて暮らすのは大変だ。

そこで登場したのが、「完全食」だ。完全食とは人間に必要な栄養素をすべて満たしている食事のこと。一般的に公的機関が示す必須栄養素をすべて含んでいる食事セットで、年齢や性別や体の状態(妊娠しているか否か)などに応じて違ってくる。基準となる国が違うとその栄養素や量も違ってくるし、提唱者によっても違ってくるようだ。

宇宙食などもこれに近いイメージだが、宇宙空間と地球上で必要とされる栄養素は違ってくる。あるいは、軍隊などで提供される缶詰セットやレトルトセットなどがこれに当たるだろうが、上述のように国によってその要素定義は変わってくる。

最近広がっている完全食は、現代人の忙しさから求める時短性と栄養に対する関心の高まりから生まれてきた。

きっかけをつくったのは、2013年に誕生したアメリカの「ソイレント」だ。米国基準で必要な栄養素がすべて入ったパウダーで、溶かして飲むことで肉屋や野菜を食べなくても健康的な生活が送れるという商品だ。ただ商品化後しばらくして、同社が開発したバーを食べた人が気分を悪くするケースが出て、カナダなどは販売を中止している。

しかし、この完全食の発想は市場を大きく揺さぶったようで、その後、英国の「Huel(ヒュール)」や、日本のスタートアップでパスタとパンの完全食を提供する「BASEFOOD」、パウダーとグミ、ドリンクの完全食を提供する「COMP(コンプ)」、ベンチャーのMAKERSが提供するバウダー式の「uFit」、大手日清食品も「All−in」シリーズの完全食を発売している。

日本能率協会総合研究所の調べによれば、日本における完全食の市場は、2024年に146億円に広がると見ているが、果たして、今後「食の楽しみ」はどう変化していくのだろうか。

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