COLUMN ビジネスシンカー

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2020.02

【new comer&考察】
お母さんもサブスク時代??
働き方改革の救世主になるか?
家事代行サービス

働き方改革が浸透してきて、就業後や休業日や時間の使い方が変わりつつある。国の思惑としては、やはり働く女性の育児や家事負担などを軽減することで、夫婦の時間や家族の時間をつくってもらうこともあるかと思う。育児や家事はもちろん女性ばかりが担うものであってはいけないと思うが、さりとて得手不得手もあるだろうから、そこは個々のバランス配分が重要だ。専業主夫も増えているが、そういったライフスタイルにあった働き方が日本社会に浸透するには、まだ時間がかかる気もする。

家事や育児を男女で分担することも重要だが、いっそのこと家事そのものを減らす考えがあってもいい。

というわけで、じわじわと増えているのが家事代行サービスだ。

少しデータが古いが野村総合研究所が経産省の委託を受けて調べた家事支援サービス業実態では、その市場規模は約700億円で、将来的(2025年)には2100億円か
ら8100億円の市場規模に膨れ上がるという。支援業者の数も約600事業所以上(2014年/矢野経済研究所)あり、主要な都市では利用できるような状況になっている。

ただ野村総合研究所が弾いたように増えていくかは疑問だ。家事代行業、あるいは家事支援サービス業を知っている人が77%以上、8割近くいたのに対して、実際利用した人が約6%に留まっていることだ。野村総合研究所の調査では、そのうち現在も利用している人が1.8%で、過去に利用していまは利用していない人が4. 7%もいることである。

この認知度と利用度の差、それと利用した後、継続するより利用を止めた人が上回っていることなどが将来の市場規模の差を生んでいるようだ。

利用しない理由の約5割が「サービス内容に比べ価格が高い」ことを挙げたほか、約4割が「他人が家の中に入ることに抵抗がある」ことを理由としている。

もともと家事は他人に任せるものではないという文化が根強い日本では、他人に任せるということ自体に抵抗があるようだ。家事代行サービスは高所得者が多いシンガポールやマレーシアなどでも増えて一般化しているが、たとえばシンガポールでは日本人が家事ヘルパーを依頼すると「今日はヘルパーさんが来るから、部屋を片付けておかないと」というジョークがあるほど。

こうした心理も働いてか、市場は期待したほどの成長曲線を描けていない。すでにリクルートの「カジアル」など、撤退した業者もある。

しかしここに来て利用者を増やしつつあるのが、マッチングサービスだ。一般のスタッフ派遣型だと時間3000円から高いと5000、6000円という料金設定となるが、マッチングサービスを利用するとだいたい時間1500円から2500円程度に収まる。

ただし派遣業と違って実務レベルがどの程度なのかは、実際に仕事をしてもらわないと判断がつかない。にも関わらずマッチング型の家事代行サービスは増えている。理由としては価格の安さもあるが、関係がフラットで、畏まった関係になりにくいところが受けている模様だ。スタッフ派遣型の家事代行だと「会社に確認してから」「担当と相談してから」など融通が効かない場合が出やすく、堅苦しい関係になりがち。また依頼する側としても家庭のなかで上下関係をつくりたくないという気持から敬遠されているようだ。

マッチング型は家事全般を行ってもらうより、その道の専門家に来てもらう感覚が強い。一般に家事と言っても多様で、たとえば炊事1つでも料理をその場で作ってもらう場合や、事前に材料を仕込んで作り置きをするケースなどに分かれていく。このためマッチング型の家事代行登録者は得意な分野で差別化することが多い。

一方こうした家事内容のスキルより、依頼者との関係性に注目した家事代行サービスもある。

「東京にもう1人のお母さんを持とう」がコンセプトの家事代行サービスが「東京かあさん」だ。月9800円〜で、3回、6時間以内から。派遣されるお母さんは全員60歳以上。炊事や洗濯、子守りやペットケアなどだけでなく、シニア世代の人生経験豊かな知恵やセンスを生かし、困った時や寂しい時の話し相手や一緒にお出かけもしてくれる。

サブキャッチでは「お母さんもサブスクしよう」と謳うが、感覚としては地方出身者がまさに東京にもう1人のお母さんを持つような感じだ。代表者の小日向えりさんによれば、定額にすることで、お母さんには仕送りをする感覚に近づける狙いがあるという。

一方やや高嶺の花の感があるスタッフ派遣型家事代行業でも、心理的なハードルを下げる取り組みも行われている。

プライバシー漏洩や家の中のものの紛失、破損などの不安に対して、全国家事代行サービス協会と日本規格協会が1年以上のサービスの実績と安心・安全性や家事レベル、対応のよさなどの厳しい基準をクリアした業者に「家事代行サービス認証」を与える制度も設けている。まだ取得業者は少ないが、今後代行業の品質の目安となっていくだろう。

またスタッフ派遣型の1つの利用法として増えつつあるのが、「ギフト」としての派遣。誕生日や結婚記念日、敬老の日など記念日、あるいはお世話なった人へお礼などとしても用途は増えている。

いまのところスタッフ派遣型の利用は世帯収入1000万円以上が中心だが、今後利便性や費用対効果が認められていけば、かなり高い成長性が見込める。専業主婦の家事労働を時給換算で積み上げていくと約480万円との試算もある。この労働のいくらかを家事代行に振り替えるだけでもかなりの市場が眠っていると言えるだろう。

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