COLUMN ビジネスシンカー

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2020.01

【new comer&考察】
これからの当たり前!?
衰退する祭りを「ビジネス」が盛り上げる

いま空前の人口減によって社会全体に様々な影響が出始めている。昨今の企業の人材不足や後継者不足は周知のこととして、伝統行事や習慣が次々と消えている。

伝統行事は日本の無形文化財であり、たとえば秋田のナマハゲや京都の祗園祭の山鉾行事など、ユネスコの世界遺産として登録されている行事も多い。しかしその一方で地域の担い手がなくなり、行事そのものが消えていく例も少なくない。2017年1月3日付の日本経済新聞では、無形民俗文化財の伝統行事が1年で20県60件が休廃止となったと報じられている。

世界に屈指の長い国家史を持つ日本にはさまざまな無形の伝統行事がある。いわゆるお祭りと言われるものでも、規模の大小にかかわらず年間30万件も全国で催され、その経済波及効果は1兆円を軽く超えるといわれる。インバウンド客が年々増加するなかでは、お祭りを始めとする伝統的無形文化財は「他にはない」魅力的なコンテンツであるはずだが、そのコンテンツが年間数十件以上も消えていくのが現状だ。

数ある伝統的無形文化財でも神輿を担ぐスタイルのお祭りは、最もポピュラーだが、どんどん減ってきている。1つは神輿を担ぐ人手が足りていないことだ。有名なお祭りでも、出し物のマンネリ化などで集客力が低下し、存続が危ぶまれているケースもある。地域の経済力の衰退も大きい。2017年には徳島の阿波踊りが資金難から4億円以上の赤字が出たと報道が出て、衝撃が走った。

こうした問題に対して国や地方自治体は、参加ボランティアの奨励や補助金制度などでテコ入れを行っているが、地域の行政やボランティアだけで盛り上げることには限界がある。

こうした年々深刻化する"お祭りの危機"を、ビジネスとして解決する動きが起こっている。2015年立ち上がった"お祭り支援会社" 「オマツリジャパン」がその1つ。

同社では、お祭りの神輿を担ぐツアーなどを企画し、若者や外国人などが神輿を担ぐなど、祭りのいわば内側の体験をさせることで、出店など周辺の飲食、宿泊施設などが潤い、主催者側である自治体や商店会にお金が落ちる仕組みを展開。

お祭りを支援するコンサルティングや運営・集客のサポート、観光プロモーションなど、さまざまな "祭りビジネス"に関わるビジネスを展開する。

活動が知られるようになったいま、同社が最も力を入れているのが、祭りと企業をマッチングさせる広告代理事業。東京の「江戸東京夜市」と「目黒のさんま祭り」では「永谷園」とのコラボを実現。永谷園の「冷やし茶漬け」の販売&PRをプロデュースし、企業と祭り主催者、来場者に"三方よし"の結果をもたらした。

のべ何万、何十万と集まる祭りは、絶好のコンテンツメディアである。SNSとの相性も良く、さまざまな拡散効果も期待できる。

同社のプロデュースにより、従来の17倍もの集客を実現したケースもあるという。

こうした成果は、人口減少や流出に悩む地域にとっては福音だろう。地域にとっての祭りは、あまりにも「当たり前」過ぎて、これまでそのコンテンツの魅力や役割について意識してこなかったように思われる。

市町村合併が当たり前となっている現在、祭りや伝統行事がそのままの姿で継続させるという発想も限界に来ているかもしれない。コラボやM&Aがあってもおかしくはない。また催行者や地元商店街にとっても祭りや伝統行事が集客のツールという見方だけでは、その存在意義が危ぶまれるだろう。

たとえば三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、祭りが持つ社会課題解決能力に注目している。

同社によれば、祭りには、1)地域コミュニティのリーダー育成、2)移住促進、3)参加者、見学者による観光集客、4)しきたりなど伝統を知る高齢者の活躍の場、5)子供が社会を知るきっかけづくり、6)準備などによる体力づくり・健康増進、7)祭りに関わる出し物等の制作による障害者活躍の場の提供など、障害者福祉、8)神輿、出し物などの関連物の制作、または地元企業のPR・広告による経済効果などがあるとする。

祭りや伝統行事を単にインバウンドコンテンツに留めておくことは逆にもったいない。令和という新しい時代が幕を開けたいま、祭りや伝統行事の魅力を改めて分解してみる必要があるのではないだろうか。

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