COLUMN ビジネスシンカー

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2021.10

知っていれば、ビジネスが楽になる! 経営心理学の基本講座

自発的な行動には
報酬を与えるべきではない

人間はお金やモノといった外発的な動機づけではなく、内発的な動機づけでやる気になるということを理論化したのがアメリカの心理学者、ヘンリー.A.マレーである。マレーによれば内発的動機には次のような5つのものがあるという。1つは適度な刺激を求める「感性動機」。2つ目が新しい経験や好奇心を満足させる欲求「好奇動機」。3つ目が活発な行動を楽しむ欲求「活動性動機」。4つ目がさまざまな試行を楽しむことを求める「操作動機」。5つ目が頭を使って問題を解決する楽しみを求める「認知動機」である。

いかに適性があり、かつ望んだ仕事でも、同じことを繰り返していけば面白味もなくなる。いつもやる気いっぱいで働くためには、こうした動機付けを上手に組み合わせて、主体的に仕事に工夫や刺激を与えるようにする必要がある。

たとえば、ふだんの業務でより早く正確に出来る方法を探る。顧客の満足度を高める方法を考える。あるいは別の作業や業務に挑戦してみるなど、内発的動機づけを刺激するアイデアを作り出すことが重要だ。

もちろん金銭報酬や待遇改善など外発的動機づけも必要だ。休暇が連続で取れたり、社員食堂のメニューが新しくなったりなど「目に見える」「分かる」ものは、人のモチベーションを高めてくれることは確かだ。

厳に気を付けなければいけないのは、内発的動機による行動に対して、報酬を加えるなど外発的動機を加えることだ。動機づけの効果が低減することがあるからだ。これを心理学では「アンダーマイニング効果」と言い、広く知られている。

たとえば子どもが自発的に清掃のボランティアをしていたのに、これにお小遣いをあげるようになると、小遣いを渡さないと清掃をしなくなるようになる。これは動機づけが内発的動機から外発的動機に移ってしまったのだ。

また似た動機づけでは、「心理的リアクタンス」というものが知られている。これは、子どもが自発的に勉強しようと準備していた時に親から「勉強しなさい」と言われ、やる気を無くす時の心理だ。子どもだけではなく、大人にも充分当てはまる心理だ。人間は生来的に自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求がある。それが他人から強制されてしまうと、たとえそれが自分にプラスになることでも、無意識に反発してしまうのだ。

「いまやろうと思っていたのに...」

そう思った経験のある人は、老若男女問わず世の中にゴマンといるだろう。

子どもの自発的な成長を促すなら、上司や親は「ちょっとだけ辛抱する」ということも覚えなければならない。

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