COLUMN ビジネスシンカー

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2021.11

エコノミスト・アナリストはこの経済指標を使う! ビジネスマンだけではなく、
日本人が知っておきたい経済指標

GDPには取引量が多くても、カウントされない金額がある

上述したように原材料を輸入し、さまざまな工程を経て出来上がる工業製品の場合、付加価値が高くなることがわかる。よって、輸入が増えても原材料が増えるのであればGDP拡大に貢献するが、消費者が完成品を輸入する場合は、輸入して消費するだけなので手数料など以外はGDPに貢献しない。したがってGDPを上げていくためには、国内サプライチェーンの長い、つまり途中に関わるメーカーが多い製造業が売上を伸ばす環境をつくることが肝心となってくる。

日本はものづくり国家として知られ、その存在感はGDPの相対位置が下がるなかでも強いのは、多くのものづくり企業が国内外で優れた製品を生み出しているからだ。とりわけサプライチェーンの長い自動車産業はその代表だ。ただ懸念されるのは、ガソリンエンジンからEV化が進んでいることだ。一般にガソリン車に使用される部品の総数は3万点とされるが、モーター駆動のEVでは2万点以下で済んでしまう。それぞれの単価が上がれば最終的な付加価値は上がるだろうが、現状はエンジンメーカーよりモーターメーカーが圧倒的に多く、自動車産業への産業障壁は低い。よってEVの部品メーカーが高付加価値を生み出すことが難しい。

現にアップルやソニーといったIT企業が自動車産業への参入を公言し、実車も開発している。

また取引が増えてもGDPアップに貢献しないものがある。

大きなものでは中古住宅だ。住宅は新築ではじめて付加価値がつくので、出来上がっている中古住宅の売買はGDPにカウントされない。中古住宅にリフォームやリノベーションをかけて売る場合は、材料を購入して付加価値をつけて販売することになるので、GDPに貢献することになる。よって中古車や中古のパソコン、古着などもいかに高値がついても手数料以外はカウントされない。

また企業が新たに設備投資をする際、工場やオフィスビルなどの建設費はGDPとしてカウントされるが、土地の購入代金はGDPに入ってこない。

他にもGDPには捕捉できない取引がある。

昔から言われている代表に家庭内の家事労働がある。その算出法には幅があるが、およそ月20万円から30万円という額が出ている。現在はこの家事労働を家事代行サービスなどの専門業者が新たなサービスとして付加価値を生み出しているが、カウントされない家事労働はまだまだ多い。

また近年はネットやデジタル技術の発展により新たなサービスも生まれている。

「ウーバー」などのライドシェアサービスや「エア・ビー・アンド・ビー」などの民泊、あるいは「メルカリ」などフリマアプリによる取引など、いわゆるシェアリングエコノミーと呼ばれる新サービスだ。従来これらシェアリングエコノミーサービスで生まれた付加価値もGDPにはカウントされなかったが、ここに来て政府はこれらを加える方針を打ち出している。現状、1,000億円程度だが、市場拡大によってさらに増える見込みだ。

さらにインターネット技術やデジタル化、AIなどの技術進化により、従来は有料で手に入れた情報が無料で提供される機会も増えている。たとえば検索サイトのグーグルやパソコンソフトの大手マイクロソフトなどは、自動翻訳のサービスを無料で提供している。またマイクロソフトは、ワードやエクセルといったワープロソフト、計算ソフトなどを有料で提供しているが、グーグルはこれらの類似ソフトを無料で提供している。こうしたことができるのはグーグルが広告収入を得ているからだが、こうした広告収入による無料ソフトのサービスは経済取引とはみなされず、GDPにカウントされない。野村総合研究所の試算では無料のデジタルサービスは日本で42兆円ほどあるといい、GDPの8%に匹敵する。

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