COLUMN ビジネスシンカー

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2021.11

エコノミスト・アナリストはこの経済指標を使う! ビジネスマンだけではなく、
日本人が知っておきたい経済指標

GDPに地下経済を計上する動きも

GDPの算出で悩ましい大きな問題がまだある。麻薬売買や違法賭博、売春、密造酒などといったいわゆる地下経済(アンダーグラウンドエコノミー/シャドウエコノミー/ブラックエコノミーなどとも言われる)の捕捉だ。

EUは2014年以降、地下経済を徐々にGDPに導入させはじめた。オーストリアのヨハネス・ケプラー大学のフリードリヒ・シュナイダー教授によればEU全体のGDPにおける地下経済の比率は18.6%に相当するという。

2017年のデータによれば、世界各国で最も地下経済の比率が高いのがボリビアで、なんと55.8%という比率。半分以上が捕捉されていないのだ。2位がナイジェリアの53.8%で、上位を中南米、アフリカが占める。

欧州ではスペインが20.3%、ベルギーが16.5%、フランスが11.7、ドイツが10.4となっている。日本の地下経済規模はGDPの10.8ほどで、欧州と比べさほど高くはないが、それでも1割もある。

欧州の国々が地下経済をGDPに組み込むようにした背景には、ギリシャの財政危機がきっかけとされる。ギリシャは2009年に左派政権が成立すると5%程度としていた国の財政赤字が12.7%であることが発覚。このためギリシャ国債が暴落し、ギリシャに融資をしていたドイツなど欧州各国の国債や通貨も暴落し、ユーロ市場は大混乱に陥った。負担に耐えきれなくなってユーロ建ての借金を返却できなくなり、増税、年金改革、公務員削減、公共投資削減など極めて厳しい財政再建計画の実施を条件に欧州各国の支援を取り付けた。こうした身を切る財政再建に取り組んだこともあり、ギリシャ経済は徐々に復活していったが、一連の財政再建でGDPは17%も落ち込んでいる。

ギリシャの財政破綻のインパクトは大きく、PIGS(ポルトガル/イタリア/ギリシャ/スペイン)といわれるGDPに対する赤字財政額が大きい国々の国債の格付けが軒並み引き下げられた。国債のリスクが高まると投資家が買わなくなるため、結果当てにしていた政策向けの資金が調達できないことになる。

その結果、自国のGDPの規模を大きく見せる手段として地下経済の組み込みを行う国が増えたという見方がなされている。「我が国は負債は多いが、地下経済を含めれば、経済力があるので破綻リスクは低いですよ」と言いたいのだ。

このように21世紀はGDPが示す数字の意味が改めて問われ始めていると言っていい。しかしそれでもGDPは重要だ。

理由の第一は国全体の景気の変化がわかるからだ。前年度に比べてどれだけGDPの値が変化したかをみるのがその国の経済成長率であり、その数字を参考に企業は設備投資をしたり、雇用を増やすなど判断していく。

経済成長率は政権をも揺るがす。かつて安倍政権はGDP2%の実質経済成長率を果たした場合を8%の消費税率を10%に上げる条件にしていたが、2014年の7月から9月期の経済成長率が年率換算でマイナス1.6%と、予想を大きく下回り、解散選挙に打って出ることとなった。

それだけGDPの変化は国の財政、政策に大きく影響を与える数字なのだ。

もう一つGDPが大事にされるのは、国際比較がしやすいからだ。GDPの中身や意義が問われているものの、各国が統一された基準で計算をしているので、投資家はどの国の株や債券を買ったほうがいいのか判断しやすくなる。ギリシャ危機で見たように成長率が高い国には当然投資マネーが集まりやすくなり、株価が上がっていく。逆に成長率が低いと投資家がその国から別の国へ投資先を変えるきっかけとなる。

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