COLUMN ビジネスシンカー

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2022.01

あらゆる企業が押さえておきたい トヨタのTPS(トヨタ生産方式)と現場発想の原点

8 人を責めずに仕組みを責める

とかくトラブルがあると、その原因の追究として最終責任者を追及するような風潮がある。しかし実際はそれに反して日本の社会では責任の所在が曖昧になりがちで、ことが起こるとまるで問題を起こす空気があったような謝罪会見や弁解になりやすい。

問題が起こった場合、誰がやったかよりもなぜそれが起こったか、その原因追究、解明が1番重要であることは言うまでもない。

トヨタには問題が起こると問いかける「なぜなぜ5回」という有名なフレーズがある。1つのトラブルに対して5段階、原因を問い続けるのである。ある原因となる事象が分かった場合、その事象の原因をまた「なぜ」といって追究するのだ。これを5回繰り返すと根本的な原因、真因にたどり着き、根本的な解決法が生まれるという。

9 標準を決める

トヨタに限らず、ものづくりの現場では「標準」というものさしを作っている。それは工程の数や部材の量、品質基準、時間の長さ、ボルトを締めた時のキツさなどさまざまだ。

よく誤解されるのは、標準とマニュアルだ。経営者のなかには「標準化してしまうと人間が考えなくなるから問題だ」と言う人もいる。

しかし、これはマニュアルと標準を混同した捉え方だ。マニュアルは現場での変更は認められないが、標準はより良い改善なら変えていいのだ。例えば工程で「在庫は30個まで」が標準になっていたら、半分の15で済むようになればそれは立派な改善であり、標準が変わったということだ。

つまり標準はその現場の力、環境によってどんどん進化させるものなのだ。まず職場の現状に合わせて標準を作っていくことから始めてはいかがだろう。

10 楽になるために改善する

改善というと「何かめんどくさい」というイメージを持たれがちだ。まして今の現状を変えるとなるととたんに尻が重たくなるもの。

何がなんでも改善するのではない。改善の対象となるのは「ムダ」「ムラ」「ムリ」の3つ。

ムダとは、付加価値を高めない検証・結果のこと。ムラとは、製品や部品の生産計画と生産量が一致せず、一時的に増減すること。仕事のばらつきが生まれ、効率的な生産ができないことだ。

ムリとは、心身に過度の負担がかかることや、機械や設備においてはその能力に対して過度の負担をかけることだ。つまり改善は何のためにするかというと人が楽をするために行うものだということだ。

例えばオフィスのレイアウトを工夫し動線を変えるだけでも、いろいろな作業の時間短縮ができる。たとえそれが1日3分4分の短縮になったとしても、1年間で換算すればものすごい量の時間となるはずだ。

その生まれた時間を、早く帰って趣味の時間や家族との時間に使うのもいい。新しい作業時間にしてもいいし、何かクリエイティブなことを考える時間に充ててもいいだろう。改善を行うことで生まれてくる時間や、取り除かれた心身の負荷は、職場の一人ひとりを楽にし、より楽しい人間関係を作り出すはずだ。

いかがだろう。グローバル企業、トヨタの凄さ、魅力を多少なりともご理解いただけだろうか。トヨタ生産方式は、業界を超えて学べるところが実にたくさんある。それは製造業だけにとどまらない。

トヨタは2011年の東日本大震災以降、宮城県にあるトヨタ東日本を中心に、TPSを他の製造業や産業に伝授している。同じ製造業でも洋菓子メーカーであったり、農業法人や水産加工業、サービス業でも請われれば、社員を派遣し、TPSの理論から実践まで丁寧に教えている。東北ではトヨタのTPSの指導を受けた企業は2021年4月で119社を数え、いずれも現場の生産性を劇的に変えている。

トヨタの強さは産業界の壁、国境の壁を軽く超えるのである。

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