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  • ビジネスシンカー

ポストコロナだからこだわる、エグゼクティブの身だしなみ術

 4年に1度のサッカーワールドカップ。日本はまたしてもベスト8に残ることはできなかったものの、スペインやドイツといった優勝経験国を撃破してのベスト16は、まさに値千金のインパクトだ。直前まではあまり結果が出せずに評価の低かった指揮官、森保一監督だが、緒戦のドイツ戦で評価は一気に逆転。スペインを破るとその評価はうなぎのぼりとなった。
 森保監督の印象アップには、そのスーツ姿もあるだろう。とくに敗退が決まった際、サポーターに深々と頭を下げた姿に「素晴らしい」「一流だ」と海外のメディアがこぞって評価した。
 ただ、もし森保監督が身にまとっていたのがジャージだったらどうだろう。印象はだいぶ変わっていただろう。サッカー監督にはとくにドレスコードはないものの試合で指揮を執る際、スーツを着用する監督は多い。

別にジャージだから指揮能力が低いというわけでは、もちろんない。むしろ近年の流れとしては、ネクタイまで締めるスーツ着用で指揮を執る監督は減りつつある。サッカー発祥の地イングランドのプレミアリーグでは、ジャージやノーネクタイにジャケットといったスマートカジュアル姿の監督が増えている。
 ただスーツであれば常に冷静で紳士的な判断をしているイメージを受けるのは確かだろう。
 森保監督のスーツ着用のこだわりは、サンフレッチェ広島の監督時代から。自身の人生の先輩からの「試合にはスーツで臨め」のアドバイスを受け、「自分なりに正装で臨んでいる」という。
 つまり、森保監督にとってはサッカーの試合という「聖戦」に臨んでの態度を表すのがスーツであり、「自分もすべてを出し切るから、選手も出し切ってくれ」という無言のメッセージが込められているようだ。
 ちなみに森保監督のスーツは採寸されたオーダーメイドで、日本代表時は有名ブランドの「ダンヒル」がスポンサードしている。その体型に合わせたもっともシルエットの美しい形になっているわけだが、フィットしたスーツは印象をさらに引き上げていることは間違いない。
 サッカーに限らず日本代表の監督となれば、その一挙手一投足が、否が応でも注目される。本人に悪気がなくても、不機嫌そうに見えたり、だらしなさそうに見えたりするだけで、本人だけでなくチーム全体に悪評が立つことは考えられる。そのプレッシャーやストレスはいかほどかと、思ってしまうが、それだけに見た目の印象づくりは重要になってくる。
 男子日本サッカーより先に世界一を極めたのが女子サッカーの「なでしこジャパン」である。率いたのは佐々木則夫監督。
 体格的にハンデのある日本女子選手たちをワールドカップの頂点に導いたその手腕は、世界でも高く評価されているが、その指導法だけでなく、印象づくりには相当気を遣っていたようだ。
 佐々木監督は就任中、毎朝必ず鏡の前に立って寝癖や鼻毛、シャツのシワを入念にチェックし、自然な香りのコロンをつけて出かけていたという。
 理由は「どんなに仕事ができる人でも、鼻毛1本出ているだけで女性の信頼や尊敬を失うから」だそう。
 「年頃の若い女性相手の監督は、いろいろ気を使って大変だな」とつい思ってしまうが、実はこの「身だしなみ」チェックを進言したのは、奥様の淳子さんだった。奥様は決して少しでも夫をカッコ良く見せたいからとか、夫を立ててやりたいと思ったから進言したのではない。「見た目」から来る信頼性や説得力がいかに重要かを見抜いていたからだった。
 なでしこジャパンは、澤穂希選手などタレントが揃っていたからこそ世界トップにまで上り詰めたのかもしれないが、そのタレントたちをまとめ上げる監督をメンバーが信頼していたからこそ成し得た快挙であり、それは監督自身が常に信頼されるに
値する言動、身だしなみにこだわり続けたからこそ達成できた偉業だったと言える。「見た目」はその組織のパフォーマンスに影響を与える。
 言い方を変えれば、見た目の効果を意識しているリーダーを持つ組織は、高いパフォーマンスを出しやすい。それだけリーダーや上司が部下や周りを気遣い、それを形にするからだ。

アメリカ大統領選の
“鉄板”コーディネートとは?

 「見た目」は人の評価を大きく左右し、社会を大きく変えることもある。その代表例がアメリカの大統領選挙だ。
 その候補者たちが選挙戦でこぞって装う”鉄板”コーディネートがある。それは赤いネクタイに白いワイシャツ、ネイビーのスーツという組み合わせだ。理由はネイビーという色が誠実さと信頼を表し、白のワイシャツは清廉さを印象づけ、そして赤は前進、情熱、
力強さを表すためだ。とりわけ赤のネクタイはここ一番に勝負をかける「パワータイ」とも呼ばれ、予備選から多くの候補者がつけている。最後までもつれた2000年の大統領選の共和党のブッシュ候補と民主党のゴア候補のテレビ討論会では、ふたりとも”鉄板”コーディネートで出たほどだ。
 もしここ一番のプレゼンの場や契約交渉の場では、赤のパワータイを締めるといいだろう。

職場のカジュアル化が
進んでいるからこそ、
しっかりした見た目づくりを

 最近では、コロナ禍もあって以前にもましてカジュアル化が進んでおり、仕事でスーツを着ている社長が少なくなった。
 とは言え、やはりパブリックな場面では、それなりの身だしなみが求められる。リモート会議でも、メリハリをつけるために仕事中は自宅でもスーツにする人も少なくない。
 得意先との商談や商品の展示会などでは流石にジーパンにスニーカーとはいかないだろう。勝負をかけたプレゼンテーションであれば、きちんとしたスーツで臨むほうが説得力を増し、成功率が高くなる。
 では現代のエグゼクティブは、ビジネスの要所要所でどんな服装をすればいいのだろうか。
 アメリカの社長や弁護士、医師などのエグゼクティブは、専門の「イメージコンサルタント」を雇って、見た目の印象づくりに気をつけている。それは漠然と”良いイメージ”をつくることではなく、相手や場面に応じてどんな印象を持ってもらうかを計算しているからだ。
 たとえば、勝負のプレゼンの時には赤いパワータイが有効だが、コンサルティングのヒアリング、あるいはカウンセリング時には、ネクタイの色は信頼と品格を表す落ち着いた色、ブルー系をつけたほうが効果的とされる。
 また親しみやすい印象を持ってもらいたいとすれば、黄色のネクタイをつけると有効だと言われている。
 アイドルや芸人の場合は、どんな場所でも1つのイメージを持ってもらうことが重要になるが、TPOに合わせ、相手にもってもらいたい印象をコントロールするのが、これからのビジネスエグゼクティブの姿なのだ。
 近年は日本でも士業やコンサルタント、高額商品を扱う営業マンなどがこうしたアドバイスを受けるようになってきた。

マルチメディア化で「見られる」機会が増えている

 なぜ、世の中のビジネスパーソンが見た目にこだわるようになったのだろうか?
 1つはメディアの多様化だ。
 アメリカの大統領選で鉄板コーディネートを最初に作り上げたのは、1960年時の民主党候補、43歳のケネディだ。この時、大統領選では初めてテレビを通じた討論会が全米で放映され、劣勢だったケネディ陣営は、若さと清廉さ、スマートさを演出するための服装やヘアスタイル、話術や表情などを徹底して研究し、知名度、キャリアで勝るニクソンを破ったのだった。それまで選挙PRはラジオが中心だったので、ニクソンはその感覚のままテレビ討論会に出て、失敗した。当時はまだテレビはカラーではなかったが、モノクロ映像でもケネディのコーディネートは十分すっきりしており、答弁の語り口を含めて視聴者に好印象を与えたのだ。
 21世紀の今日ではテレビだけでなく、ネット上にSNSやブログ、動画投稿サイト、写真投稿サイト、ホームページなど自分の姿を表現する場がたくさんある。とくにコロナ禍では、リモートが増え、見栄えする化粧やライティング、表情などへのこだわり術やアイテムが話題となっている。
 スマホ、タブレット、PC、あるいはプロジェクター、8Kモニターなど映像を取り出す端末も多様化している。それは必ずしも自分がコントロールできるSNSや動画、ホームページだけでなく、いろんな場所で撮られた映像がネット空間に広がっていくことを意味している。

もう1つは、労働市場の流動化だ。新人からベテラントップまで転職の機会が多くなり、また企業自体も合併や吸収をグローバルレベルで繰り返すようになっている。
 そうなると、転職先や合併した会社で人事担当者や上司に気に入られるためには、その年令やキャリアに応じた好印象を与える「見た目」が重要になっていく。短い時間で自分の良さを印象づけることが求められる時代になったのである。
 何より、見た目への投資が投資効果の高い行為だということに多くのエグゼクティブが気づき始めたことが大きい。

自分のパーソナルカラーを知る、
職業イメージを持つ

 では実際にどのようにビジネス上の「見た目」をつくっていけばいいのだろう。
 国内外で多くのエグゼクティブのイメージコンサルティングを行っており、またイメージコンサルティングの著書も多い日野江都子さんは、まず自分のベースを知ることを勧める。
 ベースとなるのは、1)自分の肌の色=パーソナルカラー、2)顔と体型=パーソナルフィギュア、3)職業イメージ、の3つだ。パーソナルカラーは、まず自分の肌を知ることから始まる。自分の肌に合っていなければ、いくら流行のスーツを着ていても自分の魅力を引き出せない。自分の肌に合った色合いの服を身に付けると、

・ 肌が実際より健康ではりがよく見える
・ くすみ、しみ、シワなどが目立たなくなる
・ 顔が引き締まって見える
・ 目の輝き・強さが増す
・ 肌に艶と透明感が増して見える
・ 調和が取れてセンスよく見える
・ 若々しく、イキイキとした印象になる

といった効果が得られる。逆に相性の悪い服を着ると、正反対の印象が生まれてしまう。
 人の肌はそれぞれだ。日本人は黄色人種だが、よく見ると同じ日本人でも肌色は白色人種の代表であるアングロサクソン人のように白い肌を持つ人もいれば、メラネシア人のように黒い肌を持つ人などもいる。

金と銀のアクセサリーの
どちらが映えるのかを知る

 自分の肌がどんな服に合うかを知るには、まず「アンダートーン」を調べる。イメージコンサルティングの世界では肌の色を「クール系」「ウォーム系」に分けて考える。
 その方法は、金と銀のアクセサリー(時計など)を両腕にはめてみて、手の甲や指の印象が明るく、シワが目立たず、健康的に見える方のアクセサリーの色が自分のアンダートーンになる。
 金色が似合うのであれば、ウォーム系。シルバーが似合うのであれば、クール系となる。これは女性も当てはまる。自分がウォーム系であれば、そのトーンの色合いの服飾でコーディネートし、クール系であれば、同系の配色でコーディネートする。
 パーソナルフィギュアは、顔の形と体型から構成される。
 顔の形のポイントは、直線的か曲線的か。もう1つは面長か短いかということだ。顔の骨格やフェイスラインが滑らかな人は曲線的な顔だ。頬骨やエラが張っているような人は顔の両サイドが直線的な顔になる。
 また顔の幅に対して長さが長い人は面長タイプで、顔の幅と長さがほぼ同じ人は短いタイプとなる。
 体型は大きく3つに分かれる。1つは逆三角形タイプ。上半身が発達したアスリート体型や、肩が張っている体型の人がこれに当たる。
 次がストレートタイプ、一般的男性にみられる体型。肩、腰がほぼ同じ幅で、ウエストが少し狭い体型だ。
 オーバルタイプ。全体的にふっくらした体型で、ウエストが肩、腰より太いのが特徴だ。

エグゼクティブは
「トラッド」「エレガント」「ドラマティック」を使い分ける

 職業イメージは、TPOに応じ、どんなイメージを持たせるかということだ。職業イメージは4つ。

①スポーティ…カジュアルフライデーなどに代表されるカジュアルなビジネスコーディネートのスタイル。活動的でスピーディなイメージを感じさせる。
【職業】IT系、技術系、ジャーナリスト、出版
【状況】野外活動、旅行、フォーマルでない集まり、イベント

②トラッド…ビジネスシーンでもっともベースとなる癖のないスタイル。紺やグレーの無地のスーツに白シャツが基本。信頼感を与えたい時に向くイメージ。
【職業】金融系、教育系、財務・会計系、士業
【状況】会社の面接、ビジネス関連のイベント、社会的イベント

③エレガント…紺やグレーといったベーシックなスーツに、ソフトな白、薄いブルーのシャツなど、コントラストが柔らかで落ち着いたスタイル。ステータスと威厳を示す装い。
【職業】会社経営者・役員、顧問弁護士
【状況】総会、セレモニーイベント(文化的イベント)、パーティ、メディア出演

④ドラマティック…黒に限りなく近いチャコールグレー、ネイビーの強めのストライプに純白のシャツなど、コントラストの強いスタイル。人前にパワフルさとインパクトを与える仕事など。
【職業】広告、マーケティング、コンサルタント
【状況】大きなパーティ、交渉、プレゼンテーション、パワーミーティング、TV出演など

 これら、パーソナルカラー、パーソナルフィギュアを理解して職業イメージに沿った服装を組み合わせていくと、効果的な印象を作り上げることが可能になる。

スーツは濃紺、チャコールグレーの
鉄板から入る

 組み合わせるビジネスワードローブは、1)スーツ、2)シャツ、3)ネクタイ、4)靴下、5)靴、6)ベルト、7)カバン、8)時計などのアクセサリー、9)ステーショナリーとなる。
 そのなかでも大きなポイントを占めるのが、1)〜5)のワードローブだ。

1)スーツ
 身に付けるもののなかで最も大きな面積を占めるスーツは、着ている人の印象を大きく左右する。
 まず色だが、ビジネスシーンでのスーツの色は基本的にグレーか紺。紺は「誠実さ」「精悍さ」を表し、グレーは「落ち着き、余裕」の印象を与える。
 ベージュや茶系のスーツもあるが、カジュアルな印象が強くなるので、ビジネスシーンにはあまり向かない。また黒の利用も増えている。もともとは結婚式や葬儀などの礼服として使われる色だが、デザイナーズブランドが好んで使うようになり、広がった。ただ一見黒に見えるスーツでもよく見ると黒に近いチャコールグレーだったりする。黒は相手を威圧させる印象があるので、威厳を保ちたい時にはいいのだが、交渉事などでは逆効果になり得る。また黒は汚れが案外目立つので、管理は結構難しいという難点もある。
 もしワードローブの再構築を考えるのであれば、まずはチャコールグレーと濃紺のプレーン。さらにストライプを加えた4着があれば、かなり応用がきくだろう。
 女性の場合も同じ。濃紺かチャコールグレーを基本に、あとは黒を揃えるようにする。
 女性の場合は男性ほど決まりきった法則性はないが、ジャケットとスカート、ジャケットとパンツをこの基本色で揃えておくといい。ビジネスシーンでも女性は華やかでファッショナブルなスーツやブラウスなどを着用は可能だが、やはり過度に明るい配色はフォーマルから離れていく。
 男性同様に、色の持つメッセージ性に留意したコーディネートを心がけたほうがいい。

ベントは背中のシルエットを左右する

 スーツのスタイルは、時代によって流行があるが、代表的なスタイルは、「シングル2つボタン」のスーツ。これにはオリジナルとなった国によってそのシルエットが違ってくる。最もトラディショナルなものは「ブリティッシュ」。肩幅が体型にフィットして、ウエストを絞っており、全体的に細身。
 もう1つは「アメリカン」。肩幅がナチュラルショルダーで、ウエストは絞られていない。全体的にゆったり着たい人のためのものだ。3つ目のタイプは「イタリアン」。ソフトなイメージでおしゃれ感が強くなる。肩幅はブリティッシュに近く、ウエストは適度に絞られている。
 シングル2つボタンは、Vゾーンが大きいため、サイズが合わないと垢抜けない印象になるので、注意が必要だ。主に胸囲や胴囲が大きい人に向いている。
 顔が小さめで細身体型の人はVゾーンが小さい「シングル3つボタン」タイプがいいだろう。ボタンは上の2つを留めるのが基本。同じVゾーンが小さいタイプとして、「シングル段返り」がある。ボタンが3つあるが、1つ目のボタンがラベルの裏側に隠れるようなつくりで、基本的に第2ボタンだけを留める。体型としては逆三角形型の人が似合う。
 4つ目が「ダブル4つボタン」タイプ。フォーマルなパーティなどで着用されることが多いタイプだが、ある程度、年齢に達しないと着こなしは難しいタイプだ。


 スーツ選びでもう1つ注意したいのが、「ベント(ベンツ)」と呼ばれる背中の裾の切れ込み(スリット)。正式なスーツではこのベントは入らない。しかし、動きの良さを考慮してある時期からベントが入るようになった。背中の真ん中に1本あるのが「センターベント」。サイドに2つスリットが入るタイプが「サイドベント」だ。動きやすさではサイドベントが一番だが、シルエットが美しいのは「ノーベント」タイプだ。

スーツはシワができないサイズと型を選ぶ

 スーツ選びで色より重要なのがサイズ。着てみてシワがよるのはサイズが合ってない証拠だ。
 ポイントは3つ。①ウエスト、②肩(ショルダー)周り、③着丈・袖丈だ。ウエストはゲンコツ1つが入るくらいの空きがあるのが目安。また背中周りにはシワがよりやすく、またふだん気にしていなかったりするので、仕立てる時には首の後ろや、脇にかけてシワができないかをチェックして調整してもらう。
 着丈は、まっすぐ立った時にお尻の下、袖丈は手首の外側の骨が全部隠れるくらいの長さが基準となる。
 また肩はショルダーラインがあるので、フィット感や体型に合わせて選ぶといいだろう。最も一般的なのが「ナチュラルショルダー」。肩のラインを強調せず自然なシルエットができる。いかり肩の人にお勧めだ。逆になで肩の人は、袖山が盛り上がっている「コンケーブドショルダー」を選ぶといいだろう。このほか典型的なのが英国スーツに見られる「スクウェアショルダー」。肩先が角張った男性的シルエット。また肩先を強調する「ローブドショルダー」も男性的な印象を与えたい人に向いている。

 ズボンは背広同様に全体的に細身のシルエットが流行している。選ぶ時は、胴回りもさることながら、裾の後ろが床より1センチぐらい上がった位置がベストだ。また背を高くスマートに見せるなら、裾をシングルにするといいだろう。より重厚感を出したい時には、折り返してダブルにすると動きに重みが加わってゆったりとした印象を与える。折り返しの長さは3センチを目安とする。

白いシャツには3つの色がある

2)シャツ
 基本は白のワイシャツ。白には大別すると「純白」「オフホワイト」「アイボリーホワイト」の3種類があり、パーソナルカラーで使い分ける。純白は青白さがある色で、クール系の人向きだ。アイボリーホワイトはもともと髪や瞳が茶色のウォーム系の人に似合う。純白を着たいけれども顔がくすんで見えるような人は、無地ではなくシャツに織柄が入ったものを選ぶと冷たい感じを軽減させてくれる。
 カラーシャツもビジネスシーンでは利用されている。カラーシャツは色によってまた印象が変わってくるし、色によってビジネス度合いが変わってくる。白に次いでビジネス度が高いのが、清々しさや新鮮さを印象づけるブルー系。無地だけでなく白地にブルーのストライプ、またはブルーに白のストライプなども利用されている。黄色やピンクも利用される。黄色は楽しさを印象づけ、ピンクは優しさを印象づける。最近ではこれら以外の色も増えているが、1つ注意したいのはカラーシャツを着用するときは、淡い色が原則であるということ。強い色だと汗じみなどが強調されるからだ。汗の多い夏などはとくに注意が必要だ。
 シャツにはまた、襟の種類があり、それぞれ印象が違ってくる。最もスタンダードなのは「レギュラー」と言われる襟で、襟が作る角度がだいたい70 〜90度のもの。90度以上に開いているのが、「ワイド」と呼ばれる襟で、見た目もエレガントなことから最近人気となっている。このほか襟元をボタンで留めた「ボタンダウン」がある。カジュアルで軽快な印象を与えるが、公式な場ではNG。
 ノータイでOKなものが、「ドゥエボットーニ」だ。襟腰の部分の留めボタンが2つついており、襟高が高くなるのが特徴だが、首が短い人には向かない。

シャツはプラス1.5センチサイズが基本

 シャツのサイズは、首周りプラス1.5センチ、袖口から1.5センチくらい出るのが基本。また襟の高さもジャケットの襟から1.5センチ出るくらいが綺麗に見える。
 注意したいのが、袖口。袖口が擦り切れたり、シミが付いてたらそのシャツの寿命だと考えていい。
 スーツは基本的に長袖シャツを着用。夏場でも半袖はNGだ。

紺色ネクタイは信頼を勝ち取る”万能タイ”。
赤いネクタイは、勝負を決める”パワータイ”

3)ネクタイ
 ネクタイはシャツ以上にさまざまなデザインがあり、フォーマルなビジネスシーンでも個性を発揮できる。ネクタイは大別して色と柄で構成されるが、とくに色は自分の印象づくりに大きく貢献する。
 冠婚葬祭を除き、ビジネスのどんな場面でも使えるのが「紺」の無地のネクタイ。青は品格と信頼を表し、アメリカのオバマ元大統領など世界中の政治家が好んで締めている。またチャコールグレーやネイビーのスーツとも合わせやすく、「万能」のネクタイとも呼ばれている。肌との相性ではクール系の人がとくに合う。
 ウォーム系の人は柄にアイボリーホワイトや黄色、グリーン、ブラウンなどの暖色系の色が入ったものを選ぶと効果的だ。
 ここ一番の時に使われるのが前出した無地の赤いネクタイだ。「パワータイ」とも呼ばれるが、相手に対して力強さを印象づけるだけでなく、自分自身を鼓舞する効果がある。また赤はウォーム系とクール系の分かれ目となる色で、同じ赤と言っても、ワイントーンの強い赤はクール系の人向けで、トマト色など黄味が強い赤は、ウォーム系の人に合う。
 また親しみやすさ、優しさを印象づけたいなら「ピンク」、楽しさを印象づけるなら「黄色」、「ライトブルー」は爽快、また「グリーン」には安心や快適のメッセージがあり、相手との関係性を考慮しながら自分の主張色を選んでいくといい。

ドット柄のネクタイは準礼装用。
レジメンタルストライプは海外では避ける

 柄のあるネクタイをつける場合は、柄が小さいものを選ぶとよいだろう。基本的に小さな柄になればなるほど、シックで品のあるイメージが作り出せる。遠目で無地に見えるくらいが理想的だ。
 ビジネスシーンで使われる代表的なネクタイ柄は次の通り。
【ドット(水玉)】…水玉模様というと遊び心があるようだが、等間隔で並んでいるものは準礼装で、セレモニーなどにつけることもできる。
【小紋】…柄が規則的に並んでいるもの。小さい柄のほうがよりビジネス向け。ソフトな印象をもってもらいたい時や、何度か付き合いのあるお客と距離を縮めたい時などに使えるネクタイだ。士業やコンサルタント業、医師などの人が利用すると効果的だ。
【ストライプ】…斜めに線が入ったものでイギリスとアメリカで線の方向が違う。イギリスが右肩上がり、アメリカが右肩下がりで、日本では右肩が下がっているアメリカ式は縁起が悪いとされ、ほとんどがイギリス式。フォーマルな印象だが、海外での交渉時や会食の席では避けたほうが無難だ。特にイギリス、アメリカでは、伝統校の正式ネクタイとして使われている場合などもあり、被ってしまう可能性があるからだ。

靴下はヒザ下までの長いものを履く

4)靴下
 スーツやネクタイにこだわる人も、なかなか靴下まで気を使う人は意外と少ないのではないだろうか。最近は、カジュアル文化が浸透し、短い靴下やなかには、素足にシューズも多くなったが、スーツでは靴下は長めのものを履くのが基本だ。靴下はズボンと靴の間の肌の露出をカバーするもの。座った時に向こう脛が見えるような短い靴下はNGだ。また靴とズボンの間をカバーするのが靴下なので、同系色が基本となる。

一流ホテリエは
履いてる靴を見て判断する

5)靴
 靴は印象づくりには欠かせない。一流のホテリエは靴で相手を判断すると言われている。靴は目立たないようだが、しっかり見られている。手入れが行き届いた上質な靴を履いていると、たとえそれほど値の張ったスーツを着ていなくても、それ以上のイメージをつくり上げることができる。エグゼクティブであれば10万円の靴を持つことをお勧めする。通常10万円以上の靴は製法と革の質が違ってくる。長く履いているとソールが足の形に馴染み、履き心地が変わってくるのだ。それは分かる人が分かる領域だと言われているが、やはり長く履いていても疲れない。もともと靴は欧米人の生活の一部なので、高級靴にはそのノウハウが詰まっているのだ。
 欧米のビジネスパーソンは靴を大切にする。たとえばイギリスでは新品の靴を履いている人より、良い靴を手入れして履いている人のほうを信用すると言われている。ニューヨークのビジネスパーソンは次のアポイントの合間に、街角で靴を磨いてもらうことが習慣となっているようだ。

基本はストレートチップか
プレーントゥのカーフ革

 ビジネスシーンに使われる靴は、①先端部に線が入っている「ストレートチップ」、②甲の部分にW型の飾りがついている「ウィングチップ」、③甲に飾りのない「プレーン
トゥ」、④紐なしで、ベルトで抑える「モンクストラップ」などがある。
 基本はプレーントゥかストレートチップ。色は黒かこげ茶色だ。パーソナルカラーがウォーム系の人はこげ茶色を使うとバランスが取れる。逆にクール系の人は黒が合う。国によっても好みが分かれ、イギリスとアメリカでは黒、イタリアではチョコレートブラウンが紳士の靴の色と言われている。
 素材はもちろん革だ。「カーフ(生後6 ヶ月以内の仔牛の皮)」が高級で最もフォーマル。次が「ヌバック(皮の表面をサンドペーパーなどで起毛したもの)」、その次が「スウェード(皮の裏面を起毛したもの)」になる。
 また紐もベルトもない「ローファー」もビジネスシーンで見かけたりするが、正式にはNGだ。靴を長く持たせるには、連続で履かないことだ。同じ靴を履く時には中二日を空けるようにしよう。履き終わった後は、ブラシをかけてクリームを塗っておくようにする。
 経営者などエグゼクティブの人は、どんな人と合うかわからないし、いろいろな会合などに顔を出すこともあるだろう。日によっては1日中歩くかもしれない。そういった場合に備え、オフィスに靴を数種類用意しておくのも一考だ。

ベルト幅は
3〜3.5センチの間のものを

6)ベルト
 ビジネスシーンではシンプルで目立ち過ぎないようにしよう。色は靴と同じで黒かこげ茶が基本。素材は革製。またスーツに合わせるベルトの幅は3〜3.5センチが理想とされている。大きなバックルやロゴが目立つものは厳禁だ。

基本は革製。
使用時は肩にかけずしっかり手で提げる

7)鞄

 鞄は靴と同じようにその人を印象づけるアイテムだ。ホテルでは靴同様、鞄でその人のステータスを判断すると言われている。鞄は革製の靴やベルトと同系色のものを選ぶのが基本だ。素材は革。ナイロン製やアタッシュケースも全くNGということでないが、出張時や重要書類を扱う時など、TPOに合わせて使う。また肩掛け式のビジネスバッグも増えているが、手で提げるようにするのが好ましい。

時計はフェイスの金属部分が
金色か銀色で判断する

8)アクセサリー
 ビジネスシーンでのアクセサリーと言えば腕時計が代表だ。腕時計は靴に次ぐ演出ポイントになる。男性の場合は女性のようにジュエリーを身に付けることはほとんどないので、光る物の代表として必然的に目につく。合わせ方は、ウォーム系の肌の人は金属部分が金色、クール系の人はプラチナや銀などの時計に合わせると引き立つ。注意すべきポイントは、腕時計のフェイスの大きさだ。日本人は欧米人に比べ骨格が小さいので、厚みのある外国製の腕時計をすると、バランスが悪くなる場合が多いようだ。あくまでも手許をスマートにすっきり見せるのが基本なので、大ぶりのダイバーズウォッチなどはスーツには合わないと心得ておいたほうがいい。ベルトは金属製より革製が品よく見える。これも靴やベルトと同系色でまとめると落ち着きが出てくる。腕時計はマニアが多く、なかには数百万円するような高級品をしている人もいるが、お客様が相手の時は、気をつけたほうがいい。接する相手からは「自分より高価な時計をしている」と、心よく思われない人もいるからだ。

初対面の印象を変える
「名刺入れ」にこだわる

9)ステーショナリー
 ビジネスシーンで身に付けるステーショナリーには「名刺入れ」「財布」「ペン」「手帳」などがある。なかでも初めての相手と名刺交換する際に使う名刺入れは、第一印象を左右する。上質な革製の名刺入れから取り出された名刺は、重みと信頼感を与える。名刺入れは相手の名刺を保管する場所でもあるので、質のいい名刺入れは、渡した人が「自分を大事にしてくれる」と好感を抱いてくれるはずだ。
 またエグゼクティブとなるとペンも重要だ。とくに欧米はサイン文化なので、しっかりとした筆記具を持つことが一流の嗜みとなっている。事務用のプラスチックボールペンは避け、シンプルな金、銀、深い色合いのペンを選ぶようにしよう。深い色合いのものを選ぶ場合は、手帳や名刺入れなどと合わせるとバランスが取れる。

エグゼクティブは
グルーミングに気を使う

 年齢を重ねた経営者はグルーミングも重要になる。
 もはや若い男性の間では美顔器を持つ時代、冒頭の佐々木監督の例のように、上に立つ人は、その言動に説得力を持たせる意味でも、常に健康的で清潔感のあることが求められる。
 とくに鼻毛、ひげ、肌荒れやテカリ、口臭、体臭はいかに仕事ができたとしても信頼性を失いかねない。なかでも口臭や体臭は、自分で気づきにくいので、努めて注意する必要がある。
 体臭を防ぐ方法は、朝昼晩の習慣化でかなり対応できるはずだ。朝はシャワーを浴びた後デオトラントスプレーや制汗剤で臭いを防ぐ。またビジネスアワーではデオトラント効果のあるシートで汗と皮脂をこまめに拭き取る。夜、帰宅後はゆっくり入浴して、毛穴の中まで洗い流すようにすると体臭を抑えられるようになる。
 口臭ケアにはタブレットやミントを携帯するようにし、人と合う前は数粒口に入れてすっきりした息を自分で確認するようにするといい。

香水を使って
印象をコントロールする

 人間の感覚のなかで嗅覚の占める割合は2%とも言われているが、記憶と直結しているという特徴がある。口臭や体臭は、嫌な体験を刻まれるとずっと記憶として残ってしまうもの。
 そこで欧米のエグゼクティブは、香水をつけて臭いを消すと同時に、積極的に印象づくりをしている。匂いと人物が一緒になって記憶に刻まれていていれば、ふとしたことから、その人を思い出す可能性は高くなる。問題は自分に合った香水をどう選ぶか、TPOの使い分けをどうするかだ。
 香水は複数の香料からできており、その成分の揮発時間の差により、香りがどんどん変化する。付けて間もない頃の香りを「トップノート」、次に現れるのが「ミドルノート」、最後、つけてから2時間後あたりから現れるのは「ラストノート」と呼ばれる香りだ。自分にあった基準を探す時は、この「ラストノート」を基準とする。香水はまた、種類によって香り方や香る持続時間も違う。
【アフターシェイブ】
持続時間:1〜2時間。もっとも弱い香り。肌をすっきりさせてくれる。アルコール濃度が高いので油の多い人に向いている。
【オーデコロン】
持続時間:1〜2時間。爽快感がある軽い香り。お風呂あがりやスポーツシーンに効果的。
【オードトワレ】
持続時間:約3時間。ソフトな香りで、気軽に楽しめるのが特徴。
【オードパルファム】
持続時間:約5時間。種類が多くパルファムに近い品格、トワレのような爽やかさを併せ持っている。パルファムの濃厚さが苦手な人に向いている。
【パルファム】
持続時間:5時間〜半日。香りが深く、安定した香りが長く続く。

初心者は
オーデコロンかオードトワレから入る

 どんな香りをつけるかは好みになるが、アドバイスを求めるなら、会社やビジネスパートナーで少々年齢や立場が上の人がいいだろう。プライベートシーンではないので、彼女や奥さんに意見を求めると失敗する可能性が高くなる。また会食の時は、
香水はNG。仕事の流れで会食に入るような場合は、足の関節の裏側や足首など、下半身の可動部につけるといい。
 初心者であれば、オードトワレかオーデコロンで、ミント系、シトラス系、グリーン系の香りが無難だ。女性エグゼクティブの場合は、好きな香水が決っているパターンが多いようだが、ビジネスシーンではできるだけ抑えるのが基本となってくる。とくに高級フレンチやイタリアンなどの会食では、来店を拒否する場合もあるので注意しよう。
 相手やTPOによって香水を使い分けるのが、エグゼクティブの嗜みでもある。もともと日本人は特定の匂いより、無臭性を好む。よって使う時は抑え目が無難と言える。

トップの見た目の
1ミリのこだわりが、
組織を変えていく

 「見た目より中身」とは、日本の男性社会の伝統精神でもある。それは日本のものづくりでも反映されてきた。中身が良ければ売れる、と。しかしグローバル市場のなかでは、よほど便利なもの、圧倒的に革新的でない限り見た目がよくなければ市場からはじき出されてしまうようになった。ものづくりも、ひとづくりも、「見た目」が重視される時代になった。
 見た目は、男性でも女性でもエグゼクティブと呼ばれる立場になればなるほど気にしなければならない。
 博報堂出身で、ファッションについてビジネスアドバイスを行う作家の中谷彰宏さんは、「見た目にこだわらないのは、損しているデメリットと得をする大きなメリットに気づいていないからだ」と言う。見た目がしっかりしている人は、ホテルやレストランで待遇がよくなる。もちろん新規客や取引先の印象も上がり、プラスの波及効果がどんどん広がっていく。
 先のサッカーワールドカップでは、三笘薫選手のラインギリギリで折返し「三笘の1ミリ」と話題となったが、中谷さんはエグゼクティブも「1ミリのこだわりをもとう」と言っている。なかなか慣れないと大変かもしれないが、エグゼクティブ、とくに社長は会社の行動規範であり、広告塔だ。その1ミリへのこだわりが、仕事や組織を動かし、世界を変えていく。まさに三笘選手のように。
 仕事の情熱の一部を見た目へのこだわりに向けるのも新しい事業戦略と言えよう。

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