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AI、デジタル化は人間を楽にしてくれている?? できるエグゼクティブから学ぶイマドキの休息術

AIやデジタル化がどんどん進化すれば、仕事や生活がどんどん楽になると思っていたら、思いのほか忙しくなっている。かえって急き立てられる毎日だ……。そんなふうに思ってはいないだろうか。ワークライフバランスが叫ばれて久しいが、コロナ禍ではワークとライフが一緒になってしまって、逆にストレスが増してしまったという方も多いかもしれない。刻々と変化する現代では、いかに効果的な休憩がとれるかが重要になってくる。忙しさが増す、師走。デキるエグゼクティブたちが勧める休憩術を紹介する。

名コピーライター、糸井重里さんの実感

 6,7年ほど前、コピーライターの糸井重里さんが発言した「AERA(アエラ)」(朝日新聞社)の記事がネット上で話題となったことがある。
 糸井さんは「働く人へ」と題して、「ちゃんとメシ食って、風呂入って、寝ている人にはかなわない」と発言したのだ。
 糸井さんと言えば、「不思議、大好き。」「おいしい生活」などのヒットコピーで知られ、日本の若者にコピーライターブームをつくったひとり。その活動は広告だけでなく、本や雑誌のプロデュース、作詞やゲームソフトの企画・シナリオなど、幅広い活躍をして1980年代から 90年代の「時代の空気」をつくった人でもある。
 そのカリスマもすでに古希を過ぎ、また自らも会社を経営している身だから感じる境地なのかもしれない。
 それにしても糸井さんのような時代の寵児ですら、するりと追い抜いていく“健全な人”とはどんな人なのか。
 アエラではこう続けていた。

 「寝食を忘れ無理して働けば、瞬発力で花火を打ち上げるようなことは誰にでもできるかもしれません。でも、ものごとには波があって、ダメかもしれない時期も、いまだ、進め! という時期もあります。健全な人がその波を渡っていく。だんだんと、自分がそういう人に追い抜かれていくのを想像するようになるんです。寝ないで無理すれば、大抵お酒が絡んできます。無頼を気取って飲んだくれている人を、健全な人が追い抜いていくんです」と。
 つまり、“ダメな時”も、「いまだ進め!」という“ノリノリの時”も、淡々と着実に仕事を進めていくことができる人を指しているようだ。
 企業であれば、プロジェクトを任される組織のリーダーであったり、部長や役員だろう。そういったことを最も求められる人がトップである社長だ。
 トップがしなければならないことはたくさんある。大企業も中小零細企業も含め、社長に求められることは「決断する」ことだ。適切な決断をするためには、糸井さんの言う「しっかり風呂に入って眠る」、すなわち十分な休息を取ることが極めて重要になってくるのだ。
 そんな時間がとれない、という人はどうするか。代表的な休息術が、瞑想だ。


瞑想は人間の能力を確実に高める

 瞑想はかねてより欧米のエグゼクティブたちの間で定着している。
 代表的なのはアップルの創業者の故スティーブ・ジョブスさん。学生時代にインドを放浪し、禅と出会い、アップル創業後も禅僧と交流を深めて瞑想に励んだとされる。
 瞑想は仏教の一派、禅宗の修行の一つで、座禅を組んで静かに呼吸を整え雑念を振り払う訓練として知られているが、仏教の歴史を紐解いていくと瞑想と禅は同義であることがわかる。インドのビハール地方の方言で「ジャン」と呼ばれていた瞑想が中国に伝わって「ジャウ(定)」となり、日本で「ゼ
ン(禅)」となったとされている。
 瞑想は気持ちをスッキリさせてくれるが、それだけでなく、近年の科学で人間の能力を高めてくれることがわかってきた。
 アメリカのマサチューセッツ大学カバット=ジンさんのグループの研究によれば、瞑想による独自のストレス低減方法(MBSRと呼ぶ)を8週間にわたって実践したところ、大脳皮質の厚さが増したという報告がある。また老化による脳の萎縮が少なくなったという報告もある。さらに別の研究では記憶に関連する部位が強化されている可能性も出ている。
 脳と瞑想の関係はここ10年ほどの間にさまざまな科学的研究がなされており、その効果も単に気持ちが落ち着く、心を整えるだけではないことが証明されつつある。すでにアップルやグーグル、フェイスブック、シスコなどのメガIT企業がこぞって瞑想を取り入れている。CEOや役員だけでなく、会社として取り入れているのだ。


禅のエッセンスを強化した
「マインドフルネス」

 こうした企業が取り入れている瞑想とは、東洋的な禅のスタイルを色濃く残しながら、そのエッセンスを強化した「マインドフルネス」と呼ばれる方法だ。聞いたことがあると思う。
 たとえばマインドフルネスを取り入れた米国のエトナという会社では、社員のストレスが3分の1となり、仕事の効率が向上したという。またすべてが直接的な原因ではないにしろ、導入後には社員全体の医療費が減り、1人あたりの生産性は年間約3000米ドルも高まった。
 なぜ瞑想=マインドフルネスがこれほどの効果を上げるのだろうか?
 それは瞑想が脳を休ませる最高の技術だからだ。よく慢性的な疲労感に悩まされると、「身体が重い」「だるい」「疲れが抜けない」といった症状を自覚するが、これは身体そのものが疲れているのではなく、脳が疲れているサインだ。


脳はアイドリング状態でもエネルギーを8割消費する

 よく知られているように、脳は人間のなかでも最もエネルギーを消費する器官だ。諸説あるが、基礎代謝のおよそ20%を消費するとされており、何もしなくても常に脳全体の60 ~ 80%が消費されている。これは内側前頭前野、後帯状皮質などといったデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる記憶や感情を司る部位が、意識的な活動をしていない時でも働い
ているからだ。つまりDMNとは脳のアイドリング状態で働く部位のネットワークを意味している。では脳が活性化している時にどのくらいエネルギーが必要になるかというと、わずかに5%ほど。アイドリング状態でも稼動状態でも使うエネルギーはほとんど変わらないのが脳という器官である。
 したがって脳を休ませたければ、このDMNのエネルギー消費を落とす必要がある。DMNの働きを休ませるには、脳のアイドリング中に浮かんでくる雑念を減らすことにある。この浮かんでくる雑念を減らすために瞑想が効く、というのが瞑想人気の理由となっている。ちょうどパソコンにさまざまなデータが増えて動きが悪くなってる状態が、雑念の多い状態と考えるといいだろう。


瞑想を取り入れると8つの効果が生まれる

 日常生活に瞑想を取り入れるとどうなるのか。主に8つの効果が上がると
される。
1.理解力のアップ
 理解力を阻害している雑念や偏見等、不要なデータが消えるので、新しいことや複雑なことの理解が早くなる。
2. 集中力のアップ
 瞑想は初期には意識を呼吸や自分の皮膚などに集中させる訓練を行う。瞑想を続けることで自然と集中力が上がっていく。
3. 記憶力のアップ
 余計なデータが邪魔しなくなるので日常的な忘れ物などが減り、思い出す力が強くなる。また瞑想が深くなると脳が記憶を始めた頃の記憶まで思い出せるようになる。記憶力は瞑想の力が発揮できる効果の1つだ。
4. 判断力のアップ
 判断力を阻害している大きなものは強欲だ。瞑想は欲を減らすので、冷静にあるがままの状態で判断ができるようになり、判断力を引きあげてくれる。
5. 洞察力のアップ
 瞑想すると素早く多面的な判断ができるようになるので、たとえば電話が鳴っただけで誰からの電話がわかったりする。また洞察力がつくので、相手がどういったことで困っているか、悩んでいるかについても、先回りして対応できるようになる。
6. 発想力のアップ
 瞬時に多面的な判断ができるようになるということは、さまざまなデータの組み合わせができることにもつながる。瞑想は記憶されたデータを瞬時にさまざまな組み合わせでつなげることなので、瞑想を深めていくことで発想力が上がっていく。
7. 企画力のアップ
 豊かな発想力が形となるのが企画力。発想した内容を実現可能な手順に落とすためにはどうしたらいいのか。どこを削ぎ落とせばいいのか。どんなスキルが必要で、どんな人が加わればいいのかということがわかってくるので、実現する企画が増えていく。
8. 交渉力のアップ
 瞑想すると余計な邪念がなくなる。交渉では、自分の不利を隠そうとか、騙そうとかといった邪念がなくなり、誠実で正直な態度で交渉に臨むようになる。いわゆるWin-Winの関係が生み出しやすくなり、結果として交渉力が高まっていく。
 こうした効果のほかに医学的にも①免疫機能の改善、②ストレス由来の緊張(肩こり)の改善、③深い睡眠の実現、④自己嫌悪の回避、⑤高い集中状態(フロー)の実現、⑥怒りの鎮静などさまざまな良い効果が期待できる。


疲れた脳に効く、
マインドフルネス呼吸法

 では欧米企業で導入されたマインドフルネスはどのようなものがあるのだろうか。マインドフルネスは基本的な瞑想から対象別にさまざまなスタイルがあるのが特長だ。好みや場面に応じて取り入れてみよう。いくつか紹介してみる。


◆とにかく脳が疲れている時―
マインドフルネス呼吸法

 注意散漫、無気力、イライラが続くような時はこの方法を続ける。呼吸法が身につけば、あとはどのような場所でも応用できるようになる。1日15分でも10分でも構わない。


1)基本姿勢を取る
・ 椅子に座る(背筋を軽く伸ばし、背もたれから離す)
・ お腹をゆったりとし、手はふとももの上、脚は組まない
・ 目を閉じる(半眼でもいい。視線は2mくらい先を見る)
2)身体の感覚に意識を向ける
・ 接触の感覚(足の裏と床、お尻と椅子、手と太ももなど)
・ 身体が地球に引っ張られている重力の感覚を持つ
3)呼吸に意識を向ける
・ 呼吸に関わる感覚を意識する(鼻を通る空気/空気の出入りによる胸、腹の上下/呼吸と呼吸の切れ目/呼吸の深さ/吸う息と吐く息の温度の違いなど)
・ 深呼吸や呼吸のコントロールは不要
・ 呼吸に1、2、3といったラベリングをするのも効果的
4)雑念が浮かんだら…
・ 雑念が浮かんだ事実に気づき、注意を呼吸に戻す(呼吸は「意識の錨」)
・ 雑念は生じて当然なので、自分を
責めない


◆気づくと考えごとをしている時―
ムーブメント瞑想

 いろいろなことを同時にこなして、脳が自動運転状態になっている時に、その状態から抜け出す方法。グーグルの社員研修でも取り入れられている『ムーブメント瞑想』だ。
1)歩行瞑想
・ スピードは自由。最初はゆっくり歩くのがおすすめ
・ 手脚の筋肉・関節の動き、地面と接触する感覚に意識を向ける
・ 右・左、上げる・下げるというように、動きにラベリングをする
2)立った姿勢でムーブメント瞑想
・ 足を肩幅に開いて立ち、伸ばした両腕を左右からゆっくり上げていく
・ 腕の筋肉の動き、血液が下がってくる感じ、重力に意識を向ける
・ 上まで来たら、ゆっくり両腕を下げていく
3)座った状態でのムーブメント瞑想
・ 椅子に座った状態で、後ろからゆっくり両肩を回す
・ 筋肉や関節などの動き、感覚へ細かく注意を向ける

・ 一周したら、逆に両肩を回す。感覚は同じように筋肉や関節に向ける
4)こんな方法もある
・ 服を着る、歯を磨くなどの日常の動きに意識を向ける
・ 自動車の運転中にハンドルとお尻が触れている感覚、手にハンドルが触れている、ブレーキを踏んだりする感覚を意識する
・ ラジオ体操をしながら、筋肉や動きに注意を向ける
・ 玄関を出てから、駅までなどムーブメント瞑想をするタイミングを決めていると行動しやすい


◆ストレスで体調が優れない時―
リージング・スペース

 ストレスが慢性化していると感じた時。肩のだるさから、胃腸の炎症などの症状を感じたら行う。
1)ストレスの影響に気づく
・ マインドフルネスの基本姿勢を取る
・ ストレスの原因になっていることを1つの文にする
・ その文を心のなかで唱えた時、心や身体がどう反応するか確認する
2)呼吸に意識を集中させる
・ 呼吸に1、2、3とラベリングしていく
・ 身体の緊張がゆるんでいくのを感じる
3)身体全体に意識を広げる
・注意を全身に広げる
・ 息を吸い込む時にストレスに反応した身体の部位に空気を吹き込むようにイメージし、呼吸につれてそこがほぐれていく感じを持つ
・さ らに注意を周囲の空間全体に広げていく


◆思考のループから脱したい時―
モンキーマインド解消法
 頭のなかにさまざまな雑念が渦巻いている状態をモンキーマインドと呼ぶ。この状態では脳のエネルギーが膨大に浪費されるため、どんどん疲労が蓄積し、睡眠の質も下がっていく。その状態から脱出するには雑念を「電車」とみなし、自分の頭を「プラットフォー
ム」と考えることがポイント。
1)捨てる
・ 思考にラベルを貼りつけて「何度も考えた」という事実に気づく
・「 もう十分」と思考を頭の外に送り出すイメージ
2)例外を考える
・ 同じ考えが現れるのは、同じ前提を置いているだけかもしれない
・ その考えが当てはまらないケースを考える
3)賢者の目線で考える
・ 自分が尊敬する人や歴史上の偉人ならどう考えるか?
・「 雑念そのもの」と「雑念を懐く自分」とを同一視していないか?
4)良し悪しで判断するのをやめる
・ 「いまここ」以外の基準で物事を評価していないか?
・「判断しない」を意識する
5)由来を探る
・ その考えが何度も現れてくる原因は?
・自分の「深い願望」から考え直す


◆怒りや衝動に流されそうな時―
RAIN

 RAINとは、怒りが湧いた時のいわばアンガーマネジメントの1つ。感情を司る扁桃体の暴走(扁桃体ハイジャック)を抑える方法。
1)Recognize(認識する)
・ 自分のなかに怒りがあることを認識する
・ 怒りと怒っている自分を同一視しない
2)Accept(受け入れる)
・ 怒りが起きてるという事実を受け入れる
・その事実に価値評価を与えない
3)Investigate(検証する)
・ 怒った時に身体に何が起きているかを検証する
・ 心拍はどう変化しているかを知る
・身体のどこが緊張しているかを知る
4)Non-Identification(距離を取る)
・自分の感情を個人的にとらえない
・ 怒りを突き放して「他人事」のように考えてみる


より良い睡眠のポイント

 まずはマインドフルネスの基本姿勢を身に付け、自分がいまどういう状態であるかを意識して、ネガティブな意識であれば、それを自分の中から放り出すようなイメージを持つことが大事だ。
 また冒頭の糸井さんが言っているように、休息には睡眠が一番だが、その睡眠の質を高めることが重要だ。近年の研究からわかってきている「良い睡眠のための心得」は次の通り。
1. 就寝・起床の時間を一定にする
→ 体内時計のリズムを脳に刻む

 1. 就寝・起床の時間を一定にする→ 体内時計のリズムを脳に刻む

  1. カフェインなどの刺激物を控える→交感神経を興奮させない
  2. 悩み事を書き出してから寝る→ 悩みは脳を休ませない
  3. 朝起きたら日光を浴びる→ 睡眠・覚醒のリズムができやすくなる
  4. 散歩など適度な運動をする→ 適度な運動は睡眠の助けになる
  5. 長時間の昼寝は避ける→ 夜の睡眠欲求が減る
  6. 寝る前の食事は控える→ 食べの消化は眠りを妨げる
  7. ベッドでスマホやテレビを見ない→脳が寝る場所でないと勘違いをする
  8. 一度目が醒めたらベッドを出る→ベッドは寝る場所と脳に教える
  9. 寝のための儀式を持つ→ 脳は習慣が好き
  10. 寝室をリラックスできる環境にする→ 副交感神経を優位にして睡眠を促進

長期休暇で体調を崩す人向けの「アクティブレスト」

 とは言え、こうしたバランスの良い生活ができる人はなかなかいないだろう。デジタル化は進んでも人間関係のデジタル化(仕事とプライベートを割り切った関係)は、なかなか難しいもの。そこかしこに義理人情が介在し、トップとなれば突発的な事態に指揮官として対応する必要もある。
 そういう多忙を極めるトップには、作家や講演家、プロデューサーなど様々な顔を持つ潮凪洋介さんの勧める「ゆるいワーカホリック」型の休息術が使えるかもしれない。
 潮凪さんは、自著『超一流の超休術』のなかで、休むことは大切だという言葉を信じて、しっかり休日をつくって休んでいたら、「思考は鈍り、体は太り、顔はむくみ、心と体を鈍らすだけに終わってしまった」と回想している。潮凪さんは、「それほど疲れてもいないのに、無理に休んでかえって疲れがたまってしまう」ことを何度も経験したそうだ。
「心当たりがある」と同感する人もいるかもしれない。
 たとえば、正月などの長い連休の後には体が重くなって、ふだんのペースを取り戻すのに相当時間がかかったりした経験はないだろうか? そういった人は、長期休暇中でも仕事を入れて心身のバランスを取ることが重要となる。
 潮凪さんは、現在は1年365日、休みを取らない。完全にオフの日はなく正月も1時間は仕事をするのだそう。「そのほうが心身ともに充実し、心と体が『休まる』からだ」。潮凪さんはこのスタイルを「アクティブレスト」と呼んでいる。
 家族でハワイに行った時は「早朝に仕事をして、家族とは朝9時に合流し、残りの時間を遊び切り、20時には就寝。翌日も朝4時に自然に起き、仕事を楽しんだ」そうだ。

まず抱えている仕事の
1つを減らす

 そもそも休みが必要となるのは、疲れるから。ではビジネスパーソンの疲れの最大の原因は何だろうか? 潮凪さんは「仕事が上手くいっていないから」と明言している。
 仕事が上手くいくためには、自分がすべき仕事と人に任せる仕事を見極めることだ。自分以外に任せられる仕事は人に任せ、自分がコツコツとしなければならない仕事を減らし、自分の得意技や儲ける仕組みを生み出すことに時間をかけるようにするのだ。
 やることを減らす…。それを意識し、第1目標として取り組むだけで、確実に休息の時間を確保できるようになる。やることを減らすようにすると、「人生の苦しみ、悩み、煩雑感、そして『やらされ感』が減少する」(『超一流の超休術』)とのこと。
 潮凪さんによれば、疲れが溜まる人は、努力家で向上心のある人。そしてベストを尽くそうとし、いつの間にか仕事が「相乗効果のない『分散状態』となる」と語っている。
 この「分散状態」を避けるためには、まず仕事を1つ減らすことを意識する。さらに残った仕事を短時間で集中的に取り組むようにする。

60分に1度はストレッチをする

 短時間集中と言っても、一気に2時間3時間も続けて仕事をしてはかえって非効率になる。デスクワークであれば、目も疲れるし、一定の姿勢だと肩も凝ってくる。そこで取り入れたいのが仕事中のストレッチだ。ポイントは「凝る前にやる」こと。潮凪さんは60分に1回、意識的にストレッチを入れているという。
 この定期的なストレッチをやるとやらないとでは、仕事の継続力と集中力に大きな差が出た、と潮凪さんは証言している。60分に1回のストレッチは慣れないとちょっと面倒だろう。潮凪さんも「始めた頃は時間のムダに思えてしかたなかった。しかし定期的にストレッチをしていくと、とくに午後の仕事の集中力が違った」と言う。

自分に合うなら昼間1時間の睡眠を取る

 もっと効果的な休息法は眠ることだ。睡眠の重要性は多くの専門家やビジネスパーソンが指摘している。潮凪さんは疲れが溜まって来た時は、昼間でも積極的に眠ると言う。
 電車の移動時間の15分や20分を利用し、眠るのだ。寝過ごしそうな時は携帯のアラーム機能をバイブレーターモードにしておいて眠り、また確実に眠れるように急行ではなく、あえて普通列車に乗るのもコツだと言う。
 こうしてどこでもスキマ時間に眠れる短眠術を習得しておくと、短期間に脳をリセットできて、仕事の効率が断然上がる。一般に昼間の仮眠は15分が目安とされているが、潮凪さんの場合、いろいろ試した結果、1時間の熟睡がいいと言う。
 「1日に2度朝を迎えたような、充電100%の状態から作業を再開できる」。また「1時間眠れば復活できる! そういう安心感があるから、朝早い時間からの仕事も大歓迎だ。お昼を食べてからの楽しい昼寝が待っている。その昼寝の後は、またロケットスタートができる」と、その効果を絶賛している。

自分を好きになるために、お気に入りの服を着る

 ほかにも潮凪さんは、実践に基づく効果的な休息法を挙げている。いくつか紹介しておこう。

1.お気に入りの服を着る
自分の好きな服を着ることは、最も手っ取り早いリフレッシュ方法。お気に入りの服を着て、鏡に映すだけでテンションは上がるはず。

2.都合の悪いことを忘れるスイッチを持つ                               脳を疲れさせるのは、嫌なことや心配事だ。嫌なこと、心配事が重なるとストレスはマックスとなり、脳は休むことができなくなる。嫌なことは積極的に忘れるようにすること。酒を飲んだり、好きな映画を見たりするのも手だ。大事なことは、嫌なことや都合の悪いことを積極的に忘れるスイッチを持つことだ。

3.自分で自分をねぎらう
組織のトップや自営業は孤独だ。1つの仕事を終えたからと言って人から褒められたりすることはめったにないもの。そこで疲れきった時には「おつかれさん、頑張ったね」と言って自分で腕や太ももをさすって深呼吸をしてみるといい。すると何か大きな力に褒められ、報われたような気持ちになっていく。

4.諦めて負けを認める
成功をつかむには努力しなければならない。諦めたら成功はしない。勝つまでやめなければ、負けない。そう語る成功者は多いものだ。しかし努力の方向が間違っていたら、成功がおぼつかないどころか、一生を棒に振る可能性もある。なかなか結果が出ない時は、いまの努力の方向性でいいのか問い直してみるのも手だ。正しい努力をするために、時に諦めて負けを認めることも必要なのだ。負けを認めるからこそ戦い方が変えられ、自分のパフォーマンスが上がることもある。

5.執着心を捨てる
昔からの格言に「放てば満ちる」という喩えがある。仕事のプロとしてこだわりは必要だが、必要以上にこだわり、執着しすぎると心は疲れるもの。取引先の言葉が気になっていたり、今の仕事ポジションにこだわったり。収入が同世代より低いことにこだわったり…
しかし世の中の事象は移ろいでゆくもの。こだわりを捨て「すべては変わりゆく。変わりゆかないものはない」と自分自身に唱えてみるだけで、気持ちが楽になる。

6. 週1回時間を決めて心ゆくまで眠る                            寝だめは体に良くないとも言う。しかし潮凪さんは、溜まりに溜まった疲れはやはり睡眠で取ることを勧める。潮凪さんが実践しているのは週一回の熟睡デー。早めに帰宅して午後9時くらいに床につく。すると翌朝の爽快感は格別なものになるはず。

7.波打ち際に、たたずむ
心が落ち着かず、せかせかしている時は、海岸の波打ち際で、30分から1時間を何も考えずに過ごすのもいいだろう。波のリズムにつられて呼吸がゆったりしていく。心がおおらかになり、仕事や人生がより客観的に捉えられるようになっていく。

8.好きなアーティストのドキュメンタリーを見る
疲れの最大の原因は仕事がつまらないことだ、と潮凪さん。仕事が楽しければ疲れは溜まっていかない。仕事を楽しくするための方策として勧めるのが、好きなアーティストのドキュメンタリーを見ること。パソコンでYouTube動画を見てもいい。「自分もこの人のように輝くぞ!」という前向きなエネルギーが生まれ、その後の仕事がはかどる。

9.過去の栄光、楽しかったことを思い出す
仕事が辛く、疲れが溜まっている時。無力感にさいなまれるような時は、自分のなかの過去の財産に頼るといい。学生時代に決めた野球のホームランや絵画コンクールでとった表彰、あるいは夜通し飲んで騒いだ打ち上げコンパなど、誇らしい記憶や楽しい想い出を呼び起こすだけで、脳は安らぎを感じ、生きる喜びを充満させることができる。自分の記憶財産を目一杯利用しよう。

10.先祖の墓参りに行く
人間はいつか死を迎える。死を意識しているかどうかで、仕事の質が変わっていく。いま自分を苦しめている仕事や業務も永遠に続くことはない。逆に永遠がないからこそ、一瞬一瞬に前向きになれるものだ。自分がこれからどういう生き方をすればいいのか。何を残し何を捨てればいいのか。それを意識させてくれるのが先祖のお墓。そこに入るまでに自分が何をすればいいかをシンプルに考えさせてくれるので、なすべきことがクリアになり、今の苦しみを解き放ってくれる。                    
                                                  いかがだろうか? “秒進分歩”で進むAI、DX時代だからこそ、休みの重要性が増している。忙しさの大波に飲み込まれないためにも、マインドフルネスやアクティブレストを活かし、疲れを溜めない脳をつくっていこう。

参考【書籍】●『世界のエリートがやっている最高の休息法』久賀谷亮[ダイヤモンド社]●『超一流の超休息術』潮風洋介[ワニブックス]●『始めよう瞑想』宝彩有菜[光文社]【参考サイト】● AERAdot.●朝日新聞デジタル ●ザ・ハフィントンポスト ●ダイヤモンドオンライン ●プレジデントオンライン● U-NOTE」● WIRED.jp ほか

POINT

■「 ちゃんとメシ食って、風呂入って、寝ている人」がするりと上に登っていく
■ 欧米エグゼクティブの間で瞑想がブーム
■ スティーブ・ジョブスは学生時代に禅と出会っていた
■ 科学的に進化させた瞑想、「マインドフルネス」を活かす
■ 瞑想は脳の機能を強化する
■ 長期休暇で体調を崩す人向けの「アクティブレスト」
■ ワーカホリックを自認する人は、365 日、1 時間でも仕事を入れる
■ 体が疲れているのは、脳の疲れが原因
■ 脳は体全体の20%のエネルギーを使う大食漢
■ 脳はアイドリング状態でも60 ~ 80%のエネルギーを消費する
■ 雑音や心配事は寝ていても脳を疲れさせる
■ 1日1 回の昼寝
■ 1 週間に1日のたっぷり睡眠日をつくる(寝だめ日)
■ 好きな服を着て、自分を好きになる
■ 自分で自分をねぎらう
■ 嫌なことを忘れるスイッチを持つ
■ 時に負けを認める
■ 好きなアーティストのドキュメンタリーでテンションを上げる
■ 波打ち際にたたずんで、波のリズムと呼吸を合わせる
■ 過去の栄光、楽しかったことを思い出す
■ 先祖の墓参りをして一瞬の命を感じる
■ 疲れを溜めない脳をつくる

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