COLUMN ビジネスシンカー

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2022.02

現代の参謀はAIか?!
テクノロジー万能時代に見直しておきたい
戦国時代の名参謀の「仕事」と「資質」

名参謀・名軍師に求められた6つの能力とは…

戦国時代において参謀は軍師とも呼ばれ、主に戦略から戦術の一切を取り仕切っていた。しかしながらもともと大河ドラマのような知略に満ちた者たちが行う職務ではなかった。

歴史研究家の榎本秋さんの著書『戦国軍師入門』によれば、軍師の仕事は、主に戦況を占ったり、勝利の祈願、出陣の儀式、天気を占うなど、実際の作戦とは縁遠いものだったという。

それが時代を追うごとに、実際的な戦略や戦術、それに伴った武器や食料の確保、いわゆる兵站などの技術などが求められ、それを自家薬籠中のものとしていった者が名軍師、名参謀と称されるようになっていったようだ。

榎本さんによれば、戦国時代に名軍師に求められた能力は次の6つだという。

1) 戦場で実際に活躍できる「武勇」

2) 大名の相談役として広く物事を見渡し、適切にアドバイスできる「戦略・戦術」

3) 鉄砲や築城などの「特殊技術」

4) 敵への裏切り工作や、中立大名の取り込みなどの「交渉能力」

5) 大名からの「信頼」

6)「官僚的実務能力」

どうだろう?現代の経営に置き換えても十分必要な要件ではないだろうか。たとえば1つ目の武勇は、決して血の気の多さを意味するものではない。

しかるべき時にしかるべき能力を発揮する。あるいはそれ以上の力を出すことで、組織全体に活力を与える。のみならず、暴走しそうな者を諌め、冷静さを取り戻させるような能力と読める。最近の言葉でいえば、「モチベーションマネジメント」の能力とでも言えるだろう。

2つ目の戦術・戦略については、軍師といわれる以上、当然の能力だと考えられよう。ただ時には主君と意見を異にすることもあり、その際は切腹を覚悟で忠言するか、あるいは主君が全責任を負う形で採用する、オールオアナッシングの形が多かったようだ。互いの責任が明確な分だけ、両者の折衷・妥協という案は少なかった模様だ。

マーケティング論や経営の数値化が進んでいる現代では、分析ソフトなどを使えば、ある程度の予測や戦略を導き出すことができる。そのため逆にどの企業も似たような戦略を取ることになり、戦国時代の名軍師のような奇策などが生まれにくくなっているかもしれない。変化の激しい現代においては、奇策や暴論といわれる手法を堂々とうちたてられる環境づくりが求められているかもしれない。

3つ目の特殊技術も現代に求められる能力だ。戦国時代は築城や土木技術、あるいは鉄砲をはじめとする火薬などの技術を十分にもった者は少なく、貴重だった。秀吉は戦術の天才だったが、とくに城の攻め方、落とし方、そして作り方を熟知していた。その中には小田原城攻略のようにたった一夜で城を築いたこともあるとされ、相手方の度肝を抜き、戦意を喪失させたといわれている。戦国時代の後半ともなると、築城技術はその重要性とともに広まっていったが、そのなかでも秀吉のように他を圧倒するような速さで作り上げるなど、持てる技術を磨き上げれば、技術や能力の可能性は広がる。

最近では企業内に特殊な技術、スキルをもった人が増えているようだが、日本の場合、依然経営幹部になるためには経営学や経済学、あるいは製造業なら機械工学や電
子工学、生分解化学などその専門分野を修めた人々が有利とされている。しかしたとえばイギリスなどの金融業界では、哲学や文学、人類学など、金融とは違う分野の人を積極的に登用する傾向があり、それが企業全体の底力を生み出している。

「奇貨置くべし」という言葉があるが、変化の激しい時代には一見関係性の薄い技術でも積極的に取り込む、そのような技術を持つ人材を登用することが、企業の成長には重要になってくるのではないだろうか。

4つ目の交渉力も、現代社会ではよく挙げられる能力だ。戦国時代における交渉力は、いかに戦わずに済ませるかを考えることである。その前提となるのが、情報収集力。インターネットが発達した現代では誰もが同じような知識を得られるようになった。だからこそ、ネットでは得られない「生」の情報が重要になる。より当事者に近い情報を得て、その真意や背景を探ることは参謀に限らず、あらゆるビジネスマンに求められる行動だ。

戦国時代も後半になると、国全体に戦争自体に嫌気をさす空気が漂い、いかに戦わずに有利な条件を引き出すかということが重視されるようになる。そのためには人脈も欠かせない。いかにいい人脈を持つか。これは日ごろのその人となりが問われる。礼儀を欠いたり、陰口をたたくなどのモラル、マナーはもちろん、常に自分に有利な条件だけを引き出すような態度をとらないことが不可欠となる。戦国時代は下剋上の世界。どこに裏切りの種があるかもしれないからだ。

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