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「異色コラボ」が市場を広げる

 コラボレーション。略してコラボはもはや普通名詞化している。しかし、企業のトレンドはいかに異色と組むかに注力しているようだ。
 企業同士、あるいは企業と大学、企業と自治体などの提携や協業はいまに始まったことではない。ただ技術進化が激しく、トレンドが目まぐるしく変わる市場では、従来のような同業や同規模の提携や、足りないところを埋め合うような提携だけでなく、「いったいどんな効果を期待しているのだろう?」と首を傾げたくなるようなコラボが増えている。
 たとえば、こんなのがある。

シティホテルとカップヌードルのまさに異色コラボ

 東京・西新宿にある「京王プラザホテル」は2021年7月1日から8月31日までの間に、日清食品の代表的食品カップヌードルとコラボしている。京王プラザホテルは財界のパーティなども催される格式あるシティホテルであり、館内には高級料理店がテナントとして入っている。片やカップヌードルは、お湯を注ぐだけでインスタント麺が食べられる、高度成長期の忙しい日本人の胃袋を支えた戦後の代表的大衆食である。
 日清食品側は素材としてのカップヌードルを提供、京王側はホテル館内のレストランやバーで、カップヌードルを使った特別料理やカクテルを開発し、お客さまに提供した。

 館内の和食レストラン「かがり」では、カップヌードルを使った炊き込みご飯などをラインナップさせた「カップヌードル御膳」を提供している。また高級中華レストラン「南国」では、神戸牛とカップヌードルに入っている味付け豚ミンチとをコラボさせたチャーハンを提供した。メインバー「ブリアン」ではなんとカップヌードルの風味を生かしたカクテル「カップヌードルシーフード ウォッカベース」や「カップヌードル バーボンウイスキーベース」などを提供した。
 料理だけでなく、これらの料理をパッケージに組み込んだ宿泊プランも販売。宿泊者には、カップヌードルを使った朝夕食とカクテルがついた。
 まさに異色という言葉を象徴的するようなコラボだが、高級料理店の腕利きシェフやバーテンダーがカップヌードルを素材として扱うことで、ふだん使いのカップヌードルが高級食材に変身し、意外性をくすぐり、客を驚かせた。
 ツイッター(現・X)をはじめSNSでは多くの反応が寄せられ、あるつぶやきには1万件を超える「いいね」がついたという。
 客単価が圧倒的に違う「別ステージ」と思える2つのブランドが手を携えたきっかけは、ともに誕生50周年であったことだ。ただそれだけの理由で組むにはそれなりにハードルがある。ハードルを超えられた背景にはコロナ禍がある。コロナ禍で“おうち時間”が増え、比例してネット視聴時間も増えたところで、意外性のあるネタに食いつきやすい状況だったことが挙げられよう。

串カツ田中はキットカット。コクヨは銭湯の松本湯とコラボ

 「意外性」は拡散されやすい。異色コラボはその好餌である。この異色コラボはSNSだけでなくテレビや新聞、雑誌などでも大々的に報道され、PR戦略としても十分効果を発揮したようだ。
 大阪串揚げ居酒屋を展開する「串カツ田中ホールディングス」は、「ネスレ」社の「キットカット」とコラボ、「“揚げて(アゲテ)”、みんなの夢を応援」キャンペーンを今年の11月1日から展開している。期間中は一部店舗を除く串カツ田中の全店舗で、サクサク衣で揚げたチョコ味「キットカット」の「キット串カツ」と、バナナ味の「キット串カツバナナ」がメニューとして提供されるほか、自分でヨーグルトソースにコーンフレークを絡めて食べる「自分で作るキットカット串カツ」も楽しめる。

 一方、文具大手の「コクヨ」は、糊が点で付着する「ドットライナー」が東京中野区にある人気銭湯「松本湯」とコラボし、10月10日にちなんだ「銭湯(1010)の日」に銭湯内をブルーのドットライナー柄で染まる仕様にした(2023年10月10日〜10月22日)。あわせてドットライナーオリジナル手ぬぐいやサウナハット、スパバッグなどが当たるSNSキャンペーンも展開した。

 こうした伝統/大衆文化と、人気商品や先端技術の異色コラボも比較的見受けられる組み合わせだ。
 京都のロボットベンチャーの「テムザック」は、開発中のパーソナルモビリティ「RODEM(ロデム)」に、京都市内の漆塗り商品を開発している「佐藤喜代松商店」とコラボして、漆・蒔絵をほどこした特別モデルを開発した。漆独特のしっとりとした光沢を持つボディは、京都の町家街など古風な町並みに似合っており、幅広い年代から支持を集めそうな雰囲気がある。
 コーヒーチェーンの「スターバックス」は、日本各地のものづくりとコラボした特別な商品群「JIMOTO made Series」を2021年から展開している。地元の伝統工芸品を制作する職人や、伝統技能を使った創作物などを各地の店舗店頭で販売している。主にグラスやカップなどが多いが、人形や藍染タオルなど置物や雑貨、日用品がラインナップされている。
 異色と言えば「20代から使う補正下着」をコンセプトに展開する「ルキナ アンド コー」の企画もなかなか飛んでいる。同社は直営店「Lycée Appartement(リセ アパルトマン)」で補正下着ブランド「リセ グラマラス」を販売しているが、2016年に「粋な日本」をテーマとした催事コラボで、日傘や手ぬぐい、盆栽も販売している。なんとも異色すぎるコラボだが、「ルキナ アンド コー」によれば、日本製を強調した企画だったようだ。

定番化するハイファッションブランドと有名マンガ

 異色コラボの組み合わせとして増えているのが、ハイファッションブランドと人気アニメのコラボである。
 歌手の瑛人さんが「香水」というタイトル曲の歌詞に使って一気に話題となった高級ブランドの「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」は、集英社の人気漫画雑誌「週刊ジャンブ」で話題となりTVアニメや映画にもなった「呪術廻戦」とコラボした。ドルチェ&ガッバーナはキャラクターのイメージに合わせた柄のTシャツやジャージを展開、ECサイトではコラボ商品と漫画キャラクターが並んだ。
 一方、高級ブランドの「グッチ(GUCCI)」は、これまた「少年ジャンプ」掲載の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボ。ファッション誌「SPUR(シュプール)」誌上で、グッチのバッグなどのアイテムを持った漫画キャラクターを登場させたイラストが登場、話題を呼んだ。ジョジョの奇妙な冒険は登場人物が決め台詞を吐く際に、独特の立ちポーズを決める「ジョジョ立ち」が話題だが、原作者の荒木飛呂彦さんはイタリア・ルネッサンス美術に造詣が深く、またファッションにも精通していることから、独特のジョジョ立ちは、ファッション界から注目されていた模様だ。以後もグッチをテーマにした短編漫画が制作されたり、グッチのショールームで原作者の荒木飛呂彦さんの原画展などが開催されるなど、グッチとジョジョのコラボは続き、ハイファッションブランドと有名漫画のコラボの先駆けをつくったとされている。
 このほか、同じ少年ジャンプの大人気漫画「鬼滅の刃」は、デザイナーの山本耀司さんが手掛けるブランド「Grand Y」とコラボ。黒を基調に鬼滅に登場するキャラクターが描かれた、山本さんらしいアウターを展開している。
鬼滅の刃は映画や動画配信サービスでもヒットを続け、社会現象にもなった大人気漫画だ。それだけにコラボの数も多く、神奈川県の「八景島シーパラダイス」や大阪府の「USJ」などのテーマパーク 、小学生の教科向けドリルとコラボした「鬼滅の刃 キメツ学園! 全集中ドリル」(集英社[東京都])シリーズ、キャラクターをあしらった大正製薬の指定医薬部外品の栄養ドリンク「リポビタンD」シリーズなどのほか、時計、シューズ、下駄、メガネ、キッチンカーなどもある。

鬼滅と組んだダイドードリンコは前年比200%超えの売上

 上述した京王プラザホテルとカップヌードルは、それぞれの魅力と意外性をかけあわせたシナジー効果が伺えるが、鬼滅の刃などのメガヒット作品とのコラボは、鬼滅人気に企業が乗じて売上を伸ばす狙いが見て取れる。人気漫画やアニメとのコラボがいかに企業に恩恵を与えるかの事例となったのが、飲料メーカーの「ダイドードリンコ」だ。ダイドーは「劇場版鬼滅の刃」が公開されて間もない2020年の10月5日から、鬼滅のキャラクターを缶表面にあしらった28種のコーヒーなどの缶ドリンクを販売。するとわずか3週間で累計販売数5000万本を販売、同月の売上が前年比で234.9%まで上昇している。その後11月に行った決算では予想の5倍となる純利益を叩き出した。
まさに鬼滅さまさまだったが、その後は冷え込んだ。専門家はその理由として、ファンの“大人買い”の一巡を挙げている。ダイドードリンコの主力はコーヒーであり、小学生の定番にはならない。小遣いを使って買い揃えたか、あるいはマニアな大人や若者が買い揃えて満足したのではと分析されている。
 こうした異色コラボの目的は、話題性と認知度アップによる新しい層の取り込みだが、限られた資源を有効に使う上でも重要度は増す。ただコラボと言っても片方が片方に乗っかるという形式では、乗っかったほうの技能やノウハウは上がりにくい。持続的な成長につなげていくためにも、新しい発見や驚きがあるコラボにしていきたいものだ。コラボ効果にあぐらをかいて、コラボする企業の創造力、開発力が落ちてしまっては本末転倒であることは言うまでもない。

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